NHK Eテレ「時間を遡ることはできるのか?」番組まとめ

2019年

NHK Eテレで放送された「モーガン・フリーマン 時空を超えて」

テーマは「時間を遡ることはできるのか?」

私たちは皆、時間の中を前に進んでいる。

時間を遡ることはできないと思っている。

しかし、それは間違いかもしれない。

過去にメッセージを送る。

すでに起きた物事に干渉して現在を書き換えることができるとしたら。

過去に戻ることはできるのか。

[番組内容(目次)]

[序章 ]

[過去・現在・未来は幻想か?]

[「現在」は脳が作り出す?]

[未来が過去に干渉する?]

[現在を決めているのは未来?]

[歴史を変えることは可能か?]

[過去の自分にアドバイス!]

[ワームホールを作り出せ!]

[モーガン・フリーマンからのメッセージ]

[独り言]

[余談]

[][]

[解説]

(番組放送順と多少前後有り)

[序章 ]

過去は変えようがないのか。

未来は まだ白紙の状態で何でも起こりうる。

私たちはそう思っている。

しかし、アインシュタインの登場で時間の概念は揺らぐことになった。

彼の相対性理論によれば過去・現在・未来という時間の区別は単なる幻想に過ぎないと言う。

過去も現在も未来も全てそこに存在するなら時間の砂を逆向きに流すこともできるはず。

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[過去・現在・未来は幻想か?]

米・カリフォルニア大学 哲学者 クレイグ・キャレンダーの話し。

キャレンダーは物理学や認知科学にも精通している。

彼は私たちが時間の真の姿を捕らえられない理由について考えている。

脳は次々と流れてくる情報を受動的に受け取っているだけだと私たちは思っている。

現実は必ずしもそうではない。


 例えばスムーズに動く時計の針をじっと見ている時に脳は思いがけないイタズラをすることがある。

集中してアナログ時計の秒針が動く様子を見ていると、一瞬秒針が止まったように見える時がある。

あるいは鏡の前で視線を左右に動かしてみる。

自分では目の動きが見えないため一瞬時間が止まった感覚を味わえる。

脳は私たちを騙すもの。

脳は私たちの時間の感じ方をしばし歪めている。

そもそも全体的な時間というものは存在するのだろうか。

アインシュタインは時間の本質を説明しようと試みた。


相対性理論によれば空間が三次元であるように時間も一つの次元。

その場合、空間に絶対的な ここが存在しないように 時間にも絶対的な今は存在しないことになる。

キャレンダーがいる場所はサンディエゴだが世界にはロンドンやモスクワなど様々な場所が存在している。

時空の場合もそれと同じような事が起きている。

アインシュタインによれば全ての時間は 他の三つの次元とともに既に存在している。

つまり過去も現在も未来も同時に存在しているということ。


全ての時間と空間は既に存在している。

そういう考え方を「ブロック宇宙」と呼ぶ。

それは賽の目状に目印をつけた四角いケーキのようなもの。

向かって左の端っこをビッグバンとすると反対側の右端は宇宙の終わり。

過去・現在・未来、宇宙の全ての出来事がここに同時に存在している。

ただし、ブロック宇宙を一度に全部を見ることはできない。


私たちは端とは時の間のどこかをスライスした宇宙の断面を現在として味わう。

その左側(後ろ)にあるものが過去で右側(前)にあるものが未来になる。

そしてケーキを切り分けようとするナイフの位置がその人にとっての現実。

誰もが異なる形で過去・現在・未来を切り分ける。

もらうケーキの断面が人によって違うように現在のあり方は人によって異なる。

その人独自の角度で切り取られた現在があるということ。


例えば地球上における現在には太陽系から最も近い恒星アルファケンタウリから来る光も含まれている。

しかし、アルファケンタウリの光が地球に届くには4年かかる。

我々が見ているアルファケンタウリの情報には4年前のアルファケンタウリの情報が含まれていて それらを合わせて現在を見ていることになる。

逆にアルファケンタウリに宇宙人がいたら4年前の地球の光を含む現在の状況を見ていることになる。


アインシュタインによればケーキの切り分け方で特にこれが正しいというものはない。

どのような切り分け方をしても平等で合理的だという。

脳は私たちを騙し、現在を全ての人に共通する全体のものだと思い込ませる。

さらに過去と現在も未来も一緒に存在しているのに時間は一方向に流れているものだと信じ込ませる。

これは脳が現在といっている断面をひとつにつなぎ合わせて 動画のように見せているからだとキャレンダーは考えている。


私たちは記憶を一方向にしか持てない。

貴方という存在は赤ちゃんの貴方、大人の貴方といった具合に時空を貫くアイデンティティの連続。

だから時間というものが流れているように感じるが、実際にはブロックの中を何かが動くわけではない。

私たちの時間の感覚は歪んでいるようだ。

では、その歪みを正すことはできるのだろうか。


時間は決して止まらない。

しかし、脳が処理できるのは一度に一つの瞬間だけで現在と呼ばれる時間。

もし全ての時間が同時に存在するなら時間の見方を変え未来を覗くことができるのだろうか。

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[「現在」は脳が作り出す?]

米・カリフォルニア大学 物理学者 ジェームズ・ハートルの話し。

ハートルは、アインシュタインの時間理論の研究に数十年を費やしてきた。

相対性理論には過去・現在・未来の概念はない。

人間が持つそのような概念は脳の構造に由来するもの。

脳は絶え間なく情報を処理し最新の情報が現在になる。

そして脳は古い情報を次々と記憶という倉庫に収めていく。

最新の情報が現在で、記憶に収めた情報が過去ということ。

その二つを使って創造される情報が未来。

では、これまでにないやり方で一連の出来事を解釈し時間を違う形で捉えた場合何が起きるのかをハートルは考えた。


 例えばローラーホッケーの試合。

選手は現在起きていることを考え未来の行動を決める。

では、ここである選手にとっての現在が他の選手にとっての過去になったら何が起きるだろうか。

一人だけ選手を選び、時間間隔を変えるゴーグルをしてプレイをしてもらう。

このゴーグルは現在の出来事が十秒遅れて見えるようになっている。

試合が始まると選手は一斉に動き出すが、ゴーグルをつけた選手だけセンターラインに残ったまま。

彼にとっての現在は他の選手にとっての10秒前の出来事だから。

その後もゴーグルをつけた選手のプレーは他の選手に遅れをとる。

まともなプレイは不可能。

ホッケーの場合、過去を現在として見ている場合は何の役にも立たない。


これが自然界なら影響はもっと深刻。

ハンターが そこにいると思った獲物が実際にはすでに逃げた後だったら永遠に獲物を取れず、逆に自分が獲物にされてしまうかもしれない。

生き残るための最も効果的な方法として生き物は目の前の出来事を現在として認識する能力を発達させた。

さらにハートルは複数の現在を経験できる事で脳が果たして有利なのか考えてみることにした。

脳があらゆる瞬間を現在として認識できるとしたら貴重な情報処理能力を役に立たない選択肢に対しても費やすことになる。

仮にあるホッケー選手がすべての瞬間を現在として認識できたらどうなるだろう。


選択肢の多さに圧倒され動きが取れなくなってしまうとハートルは考えている。

過去・現在・未来と言う時間の捉え方は生き残る上で最良の選択。

この環境に最も適した物語を脳が作り出している。

では全く違う環境では時間の捉え方も変わってくるのだろうか。

他の惑星に住む生命体が過去・現在・未来という形で時間を捕えているかどうかは非常に興味深い問題。


環境が全く異なる星に住む生命体は、私たちとは違う時間の捉え方をしているかもしれない。

過去・現在・未来を同時に捉えている可能性すらある。

そのような時間の捉え方は人類には不可能なのか。

そうでもなさそうだ。

ある科学者は時間の反対方向に伸びる未来の影を見つけたと考えている。


どこへ行くにも今一歩を踏み出すから こそ先に進める。

当然のことのように思える。

しかし、最先端の科学はこの逆の可能性を示している。

それによると未来が現在の行動に影響を及ぼしているという。

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[未来が過去に干渉する?]

英・ブリストル大学 物理学者 サンドゥ・ポペスクの話し。

彼は未来が過去に影響を及ぼしていると考えられている現象を発見した。

ポペスクがそれに気づいたのは同僚たちとともに「鳩の巣原理」と呼ばれる数学の概念に取り組んでいた時のこと。


ここに鳩が3羽いる。

巣箱は二つしかない。

必然的に3羽の鳩を二つの巣箱に入れなくてはならない。

ごく当然の話。

しかし、鳩が素粒子サイズになった場合、量子力学の法則に従って不思議なことが起きる。


素粒子サイズの3羽の鳩は二つの巣箱に納まると同時に2羽の鳩が一つの巣箱に納まることはないという現象が起きる。

一つの巣箱で同時に二つの素粒子を見つからないようにすることはできる。

そのような不思議な現象が起きるのは素粒子レベルの物質の場合。

それは素粒子が存在する位置が確定できないから。

素粒子は私たちが日常的に接している物質とはまるで違う振る舞いをする。


例えば原子は同時に複数の場所に存在することができる。

見方を変えると素粒子同士は同じ場所に同時に存在するのを避けていることになる。

そう考えたポペスクは未来の情報が時間をさかのぼるという大胆な結論を導き出した。

観察対象物と粒子の場合、私たちが観測するまで素粒子の位置は定まっていない。

これは未来が過去に影響を及ぼす可能性を示している。

ポペスクはこの問題について調べるため ある実験を考案した。


三つの電子をひし形コースの装置に発射する。

この装置には二つのコースがあり一つは左、もう一つは右に伸びていて次の分岐点では集まって三つの電子が出会うようなコース取りになっている。

この二つのコースは「鳩の巣原理」で言うところの巣箱だと考える。

ここでは三つの電子を帽子をかぶった3羽の鳩に見立ててみる。


鳩が3羽。

進むコースは右か左。

少なくとも二羽の鳩は同じコースを進まなくてはならない。

そうするとコースの幅はとても狭くなる。

そのために二羽の鳩が同時に進もうとしても鳩同士がぶつかって帽子を落としてしまう。


これらの鳩は素粒子を表しているので通るところは見られない。

それは素粒子を直接観察すると その動きに影響を与えてしまうため。

私たちが素粒子を観察すると実験結果に影響を与えてしまう。

それを避けるため実験は暗闇で行う。

観察できない暗闇で何が起きたのかは帽子を落としたかどうかなどの痕跡を調べることでわかる。

鳩が帽子をかぶったままなら ぶつかっていないという証拠。

帽子を落としていればぶつかった証拠。


この実験では他の量子力学の実験と同様にやるたびに違う結果が出る。

素粒子を全く同じように発射しても帽子をかぶったままの時もあれば落としている時もある。

やがてポペスクは奇妙なことに気づいた。

分岐点を過ぎて片方のコースに鳩が3羽集まる場合、全ての鳩が必ず帽子をかぶっていた。

3羽の鳩は同じコースを通ったはずなのに何故かぶつからなかった事になる。

しかし、それよりも前の分岐点直前の場所で観察した場合には違う結果が出た。

3羽とも帽子をかぶっている時もあれば2羽が帽子を落としていることもあった。


分岐点の直前でチェックする場合は常に二つの可能性が存在している。

帽子を落としているケースと帽子を落とさないケース。

ところがそれより後の出口で観察した場合、二つの可能性のうち一つしか残らない。

私がどこで観察するかという決定はコースを通る鳩にとっては未来の出来事。

これは一体どういうことだろうか。


ポペスクによれば未来の情報が過去に行ってきたと考えるのが一番自然だという。

鳩はまだコースにいる間にポペスクが出口にいて観察することを知り ぶつかり合わない通り方をするという。

確かに奇妙な話に思える。

しかし、この問題を説明しようとするとどうしても未来が過去に影響を与えるという結論に達することになる。


こんな言い回しがある

「人生はチョコレートの詰め合わせのようなもの」

「可能性がたくさんありどれにあたるかは分からない」

しかし、未来の方が過去に手を伸ばしているとすれば私たちが思うほど可能性は多くないのかもしれない。

全宇宙の未来が私たちの未来をコントロールしているのかもしれない。


未来の出来事が現在に及ぼす。

少なくとも素粒子の世界ではそれが観察されている。

そして人間のこの世界も全て素粒子から成り立っている。

だとすれば宇宙の最終的な運命は現在に影響を及ぼしているのでは?

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[現在を決めているのは未来?]

米・アリゾナ州立大学 物理学者 ポール・デイビスの話し。

彼は未来で起きていることが現在に影響を及ぼし、存在すると思われた選択肢を実際には消し去っていると考えている。

例えば学生たちがデービスの教室に足を踏み入れた瞬間、講義をサボるという選択肢は消えた。

学生たちはサボろうと思えばサボれるはずと考えられるがデイビスによればそのような選択肢はなかったのだと言う。

未来で起きることと現在を起きることは結びついている。

現在はなぜか未来で起きることを知っている。

このように現在起きていることも過去に影響を与えている。

日常生活に当てはめると奇妙な話だが、これは素粒子の世界で普通に起きていること。

問題は素粒子レベルの話がもっと大きなレベルでも通用するのかという点。


 量子力学は原子など極小の世界について多くのことを解明した。

しかし、ここで疑問が生じる。

量子力学の理論はどの範囲まで当てはめることができるのかということ。

物質の大きさや量などスケールが変わってくれば全く通用しなくなるのだろうか。

中には全宇宙に適応できるという科学者もいる。

その考え方の利点は、宇宙の起源やビッグバンの説明がつけやすいということ。

量子の世界の不確定性や予測不能性が重要な意味を持つ。

量子力学の文脈で考えれば宇宙が「無」から突然現れたという考え方が説得力をもつ。


ある物体が未来に存在する位置が現在の位置を制限する。

デイビスはそれと同じことが私たちの日常生活でも起きているのではないかと考えている。

例えばデイビスが妻と記念日のディナーを楽しむとする。

これらの行動は事前に制限を受ける。

記念日当日に同僚が私をコンサートに誘ったとする。

魅力的な誘いだが、もしイエスと言えば妻との約束をすっぽかすことになる。

予定を調べ彼は自分に選択肢があるように感じているかもしれない。

コンサートとディナーどちらを 選ぼうか。

しかし実際には選択肢など最初から存在しない。

もしディナーをすっぽかしたら彼の人生は壊滅的な打撃を受けることになるから。

妻と記念日のディナーをする、そんな近い未来の出来事がデイビスの現在の行動を制限している。

これをしないといけない、あれもしないといけない、どちらを選ぼうか未来の行動の選択によって現在の行動が制限されている。

このような未来から過去へ向かう影響力は宇宙的な規模で働いているとデイビスは考えている。

話をわかりやすくするため宇宙をチョコレート工場に例えてみる。


宇宙の始まりビッグバンが製造ラインの最初の部分。

宇宙の終わりが完成したチョコレートの出てくるところ。

現在はその中間のどこか。

今、起きていることが物事の最終状態を決定すると思うかもしれないが実は完成したチョコレートが製造工程を決めている。

最終的にどんなチョコレートを完成させるかによって特定の材料が選ばれる。

製造ラインの途中を見るとクリームやラズベリー味の材料入れることで様々なチョコレートができるように見えるかもしれない。

しかしラズベリー味のチョコレートを作るなら最初からその材料しか製造ラインに入らない。

結末が現在起こりうることを制限している。

同じような力が宇宙の終わりから現在に向けて働いている可能性がある。

宇宙の最終状態が元々決まっているのだと考えればそれは製造ライン=すなわち現在にも影響を与えているはず。

ただし大きな違いがある。


チョコレートの場合、製造する機械の構造によって最終状態がどうなるかあらかじめ決まっている。

一方宇宙の場合、そのような最終状態が存在するかどうかは分からない。

科学者の多くは遥か未来の宇宙について冷たく暗く素粒子が全くない状態になると考えている。

デイビスは そんな未来の影響力をある実験によって検知できるかもしれないと考えている。

例えば宇宙の彼方に向けてレーザーを発射するというもの。

発射したレーザーは最終的に惑星か何かにぶつかるのであれば正常に作動するはず。

しかし物質が何もない空間(理論上レーザーが永遠に飛び続けるような空間)に発射した場合はレーザーは作動しないかもしれない。

宇宙の暗い部分にレーザーを放つ実験で未来の宇宙に光が存在するかどうかがわかる。

これは宇宙の最終状態に光が存在しないのであれば遥か未来まで飛び続けるレーザービームは存在を許されないはず。

従ってレーザーは作動しない可能性があるということ。

未来が現在や過去に影響を及ぼすとした場合、興味深い可能性が出てくる。


私たちが時間を遡り、過去に影響を与えられるかもしれない。

量子力学は未来が過去をコントロールできる可能性を示唆している。

その理論を実践できる日が来るかもしれない。

しかし、どの程度のことが?


歴史を書き換えることはできるのだろうか。

例えば戦争が始まる前にヒトラーを止める。

あるいはケネディを暗殺者の弾丸から救うことは できるのか。

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[歴史を変えることは可能か?]

米・南カリフォルニア大学 物理学者 トッド・ブルンの話し。

ブルンは過去に戻って暮らしたら何が起きるのかを想像するのが好き。

そしてタイムトラベルを可能にするための研究を続けている。


 時間の方向というものは謎めいている。

物理学の方程式では 前にも後ろにも進むことができるはず。

しかし私達の日常では時間は一方向にしか進まない。

すべてのものは歳をとりやがて死んでいく。

逆はない。


黒板に何かを書く時にはチョークの先端が砕け、その粉は黒板に付くことで跡が残り何かを書くことができる。

砕けた粉が再びチョークの先端にくっつくことはないし、それでチョークが長くなることもない。

時間は一方向にのみ進むから。

しかし、アインシュタインが言うように時間が一つの次元だとすれば過ぎ去った時間は消滅したわけではなく まだどこかに存在しているはず。

時空とは過去に起きたこと、現在起きていること、未来に起きることそれら全てを含む存在。

過去に起きた出来事は今も存在するのに手が届かないだけなのかもしれない。


アインシュタインの理論によると光の速さを超えて移動すれば時間は逆向きに流れるはず。

しかし光の速さで移動するには無限大のエネルギーが必要なのでこの方法は使えない。

しかし過去に行く方法は他にあるかもしれない。

それは「時間的閉曲線」と言われる時空の歪みで別の時間への抜け道となる物を使うというもの。

時空に物質が特殊な配置で置かれるとそうした経路が大きく曲がり、輪っかのような構造になる。

これを利用すれば光より速く移動する必要はない。


ブルンが前に進むと時空の輪っか構造によって同じ位置の過去の時間に戻ることになる。

これは私たちの日常では見られない状況。

しかしアインシュタインの方程式を解いて行くと時間的閉曲線を含んだ解が見つかり物理学の法則に従って過去に戻ることは理論的に可能。

ブルンが先祖のところを訪れタイムトラベルの仕組みを教えることもできるということ。

しかしブルンは過去を変えることは不可能だと考えている。

そうでないと多くの矛盾が生じるから。


ひとつの世界の歴史には一つの行動しか納まらない。

矛盾することや両立できないことの存在は許されないということ。

別の言い方をするとタイムトラベラーの行動はすでに起きたことと合致するということ。

例えば過去にタイムトラベルをしたブルンが あるダンスを止めたいと思ったとする。

過去に矛盾が生じてはならない。

だからブルンが過去のダンスに割り込んで ある人物の邪魔をしようとするとその瞬間その人物はダンスを止めて去っていくはず。

ブルンが過去を変えようとしても既に起きた出来事を実現させること以外の事はできないということ。

もし、ブルンがダンスの輪に飛び込んだとしたら そのような過去は既に存在しているはず。

そのダンスは元々邪魔が入るようになっていて それをブルンが実現したに過ぎないということ。

もしダンスが滞りなく終わったという過去が存在するなら邪魔をしようという部分の努力は無駄に終わるはず。


このような安全装置がある以上、過去に戻って自分が生まれる前の親を殺すことはできない、要するに成立しないことになる。

しかし、無視できないパラドックス(矛盾)がもう一つある。


タイムトラベラーがタイムマシンの設計図を祖先に渡す場合。

祖先はもらった設計図を子孫に伝えるはず。

その設計図を使って子孫が過去にタイムトラベルをしたとすれば そもそも設計図を作ったのは一体誰なのだろう?

何もないところから設計図が湧いて出たことになる。

タイムトラベルは不可能だと考える人々は しばしばこのパラドックスを引き合いに出す。

しかしブルンはタイムトラベルによって「無」から情報を引き出すことが可能だという。

時間的閉曲線に関するいくつかのモデルによれば この世界は何の計算もせずに情報を生み出すことが可能。

そのためブルンは歴史は変えられないものの過去に戻ることはできると考えている。


ただし、まだタイムマシンは実現していない。

しかしタイムマシーンがなくても過去に行けるかもしれない。

過去に行き かつての自分に会うということは未だにSFだけの話。

しかしある方法を使えば可能かもしれない。

今の私たちを過去とつなぐことが。

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[過去の自分にアドバイス!]

米・ヴァンダービルト大学 物理学者 トマス・ワイラーの話し。

彼はある小さなタイムトラベラーを探している。

それを見つければ過去にメッセージを送ることができるかもしれない。

ワイラーが探しているタイムトラベラーは「ヒッグス・シングレット」と呼ばれている未発見の粒子。


物質に質量を与えているとされるヒッグス粒子は強力な加速器によって人工的に作り出すことに成功している。

その際に原子よりも小さな破片が発生する可能性がありヒッグス・シングレットと呼ばれている。

しかし、それを見つけるのは困難。

ヒッグス・シングレットは別の次元に移動しているかもしれないから。

空間の次元は三次元よりも多く存在するはずだという説があるが三次元を離れることができる素粒子はまだ発見されていない。

なのでヒックスシングレットは非常に特殊な素粒子だということになる。


ヒッグス・シングレットの特殊性を理解するため おもちゃのプラレールで作ったレース場を空間の次元だと考えてみる。

プラレールはまっすぐ横に進むだけのコースト途中に切替が付いていて宙返りループを通る二つ目のコースが合体したものだとする。

平らな直線部分は私たちの入る三次元。

宙返りループは四次元以上の別次元。


これまでに  発見された粒子は 強い力・弱い力・電磁力のうち一つに惹きつけられる。

どの力に惹きつけられるかは その素粒子が持つ「チャージ(荷量)」によって違う。

素粒子は必ず何らかのチャージを持っている。

チャージを持たない素粒子はまだ発見されていない。

通常の素粒子は何らかのチャージを持ち、そのチャージによって三次元にくっつく。

その様子を表しているのがレース場を走るミニカー。

通常の素粒子は三次元にくっついたままなので時間の中を一方向にまっすぐ進む。

しかしワイラーによればヒッグス・シングレットはいかなるチャージも持たないため全く違う動きをする。

ヒッグス・シングレットが感じるのは重力だけ。

そのため通常の経路を外れ切替によって導かれる宙返りループで表された別次元に行けるのではないかと考えている。


ワイラーはその次元のことを「U次元」と呼んでいる。

U次元はとても小さな次元だがヒックス・シングレットならそんな次元を感知することができる。

ヒッグス・シングレットは宙がえりループに入ると一瞬だけ時間の流れに反する動きをする。

アインシュタインは時間を反対の方向に進められるないはずがないと考えていた。

ワイラーも同意見。

ヒッグス・シングレットはまず真っ直ぐなコース=正の時間を進み、宙がえりループで負の時間を進み、また正の時間へ戻る。

これでは進む距離が増え余計な時間がかかってしまう事になる。

しかし、宙返りループのところで時間が過去に進むと考えれば時間のつじつまを合わせることが出来る。

これがヒッグス・シングレットの見つけ方のヒントになった。


スイス・ジュネーブにある世界一強力な加速器(CERN)は陽子をほぼ光速近くまで加速し正面衝突させる。

その衝突で生じた原子よりも小さな破片は一瞬だけ存在し すぐに消えてしまう。

ワイラーはこうした破片の一つがタイムトラベラーではないかと考えている。

そして時間を逆行させるヒッグス・シングレットを見つけるには衝突の前に何が起きたかを調べる必要がある。

過去に移動できるのだから生成される時点よりも前に飛び散っているはず。

加速器は衝突の前に何が起きたかを観測できるようには設計されていない。

衝突によって素粒子が生成される前に崩壊や再衝突は起きないと考えているから。


意図せずして作り出されているかもしれないヒックスシングレット。

この謎めいた存在こそが時間を遡る鍵になるとワイラーは考えている。

ヒッグス・シングレットをコントロールすることができれば素粒子をモールス信号のように使って過去にメッセージを送れるはず。

過去の自分に注意事項を伝えられるかも。


過去と繋がるリンクは すでに存在しているのかもしれない。

ある科学者はタイムマシンを作るのに必要なものを見つけたと入っている。

人類の長年の夢は実現するのだろうか。

タイムマシーンを使って過去の素晴らしい時間を再び体験したり何かをやり直せたりしたらどんなに素晴らしいことだろう。

タイムトラベルを実現する鍵となるのがワームホール。

ワームホールは時間と空間を通り抜ける宇宙の近道。

まだ発見されていないが それならいっそのこと作ってしまえばいいと言う科学者がいる。

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[ワームホールを作り出せ!]

英・エディンバラ大学 理論物理学者 ルーク・ブッチャーの話し。

彼が研究しているのはエネルギーによって作り出される時空の歪み。

アインシュタインの方程式はエネルギーと宇宙の現実。

そこに生じる歪みの関係を表している。

平らな空間にエネルギーを与えると歪みが生じる。

エネルギーが強くなるほど歪みは大きくなる。

ワームホールは時空の極端な歪み。

理論上は二つの異なる時間・二つの異なる空間をつなぐことができる。

ワームホールは実際には見つかっていないが数学的に研究することができる。


アインシュタインの方程式にブッチャーが考えた時空の形を当てはめると時空が安定するために必要なエネルギー量も計算できる。

時空の一部を歪ませ、人は移動できるようなワームホールを作るのに必要なものが負のエネルギーと呼ばれる特殊なものであることがわかった。

負のエネルギーとは何かを考えるにはまず零点エネルギーをつまり真空エネルギーについて考えると良い。

真空は本当に何もないわけではなく無数の素粒子が現れたり消えたりしている=「量子揺らぎ」

そうした量子ゆらぎを取り除けばエネルギーになる。

研究室では わずかだが負のエネルギーを作り出すことに成功している。

2枚の金属板をギリギリまで近づけると板の間の空間で量子揺らぎが抑えられエネルギーが零よりも低い状態になる。

これが負のエネルギー。

このプロセスをスケールアップできればワームホールを作るのに必要な負のエネルギーを確保し過去に通じる扉を開くことができるかもしれない。

しかし、大きな問題がある。


ワームホールは極めて不安定で入ろうとした途端閉まってしまう。

そんなワームホールをタイムマシンとして使うのは無理だろう。

出口にたどり着く前にワームホールが崩壊してしまうから。

しかしブッチャーはさらに研究を進めワームホールを細くすれば寿命をのばせることに気づいた。


ワームホールには二種類のカーブが存在する。

一つはワームホールが伸びる方向のカーブ。

もう一つはワームホールの内部を取り巻くようなカーブで入口(または出口)からみると輪っかに見える。

全体的に細長いワームホールなら負のエネルギーもそれほど多く必要としないはず。

しかも この細さ自体が負のエネルギーをいくらか生み出す。

ワームホールが伸びる方向のカーブは何か支えるものがあればバランスが保てる。

しばしばワームホールの形を表すのに用いられる枝細工で言えば、輪になった部分が全体の構造を安定させている。

ワームホールにおける負のエネルギーと同じ役割。

ワームホールのトンネルを取り巻く時空の輪は、それ自体が負のエネルギーを作り出し出入り口を開いたままの状態に保つ。

このワームホールは典型的なワームホールに比べると はるかに細長い形をしている。

カーブは緩やかで内部は狭くなっている。

この方が必要とする負のエネルギーが少なくて済み安定性が保てる。

しかし根本的な疑問が残る。


ワームホールは本当にタイムマシンとして利用できるのだろうか。

今のところ絶対に無理とも絶対に大丈夫とも言えないのがもどかしいところ。

しかし彼の計算によればワームホールを通じて光速に近い速さで物体を送ることができるはず。

ブッチャーのワームホールは安定しているものの人が通ることは不可能な狭さ。

しかし光なら通り抜けられるので過去にメッセージを送ることができるはず。

将来新たな歪みが見つかれば人間を送ることも可能になるかもしれない。

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[モーガン・フリーマンからのメッセージ]

時間は過去から未来へと絶え間なく流れているように思える。

しかし、それは必ずしも正しくない。

過去に起きた出来事が消滅するのではなく宇宙という織物の一部として今も存在している。

いつの日か過去と未来の糸を自由にたぐり寄せ、時間が持つ果てしない可能性と戯れることができるのようになるかもしれない。

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[独り言]

過去に放送された「モーガン・フリーマン 時空を超えて」で取り上げられたテーマを総合的に見ると現在や過去は未来からの投影と考えると筋が通ると言っている。

直感的には受け入れがたい。

それなら何故私たちは考えて行動するのか?

その考えすら未来が決めているとすると・・・理解に苦しむ。


 それなら こう考えてみてはどうだろう。

現実とは出来上がりの絵を完成させるために存在しているもの。


絵の完成品が存在するためにはカンバスや画用紙・筆・絵具が必要。

ここで画用紙に注目する。

画用紙が存在するためには樹木が必要。

樹木が存在するには水・光(太陽)・土・空気が必要。

太陽に注目して。

太陽が存在するために大きな恒星や それを構成する原子が必要・・・。

と言った形で様々なものが存在し、素粒子が無いともしくはビッグバンの様な現象がないと最終的な絵が完成できないことになる。

現在や過去は未来を全うするために存在しているだけなのかもしれない。


従来の過去の出来事が現在や未来を決めるとする「因果論」に対し「逆因果論」とでも言うのだろうか。

既に決まった未来があると言うのも少々味気ないと言うか夢が無いようにも思えるが、未来を感知する能力が無い者としては、それほど大きな問題ではない様に思える。

故に現在や過去が未来からの投影だったとしても探求する楽しさはあっても問題にはならないだろう。

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[余談]

「時空を超えて」という番組を見て思うのは二つ。

一つはH・G・ウェルズが書いた小説「タイムマシン」は予言を込めた作品だったと改めて思い知らされる事。

小説のポイントは死んでしまう恋人を死から救うためにタイムマシンを作る主人公の行動。

主人公が何度となくタイムマシンで過去に戻るが恋人は必ず死んでしまう。

何百回と過去に戻ることを繰り返しあらゆるパターンで恋人が死ぬ様を見た主人公は あるとき、未来に行って未来人に真実を聞くことを思いつく。

遥かに高度な技術・文化・知識を持った未来人なら恋人を救う方法を教えてもらえるのではないかと考えたのだ。

ところが未来人に告げられた言葉は衝撃的なものだった。

『恋人が死んだからタイムマシンが世に生まれた』

『故にタイムマシンが存在した時点で恋人は必ず死ぬ運命ができあがった』

なんとも現在が未来からの投影という現代科学が導き出そうとしている現実(?)を言い表した物語だと言わざるを得ない。


 もう一つ思い起こされるのは解剖学者の養老猛氏の言葉。

『人間が考え付くものは時間がかかるかもしれないが必ずいつか実現する』


だとすればSFの世界に出てくるパラレルワールド・並行宇宙・無限宇宙・ワープやワームホールもいずれ普通に存在が語られる世界が来ることになる。

現在や過去が未来からの投影だとすれば頭に思い描けるすべての事は それこそが未来からの投影なのかもしれない。

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