NHK「眠りの科学」番組まとめで知る睡眠の重要性

2018年

NHKで放送されているドキュメンタリー

テーマは「眠りの科学」

原作は2016年カナダの番組

原題 The Science of sleep

製作 Infield Fly Productions

番組案内人 生化学者 ジェニファー・ガーディ


何世紀もの間、眠りは体を休めるための手段としか考えられていなかった。

しかし、それが今大きく変わりつつある。

もし、睡眠が重要でないとしたら人は間違った進化をしてきたことになる。

人の脳は、睡眠中もはっきりとした目的を持って活動していることが分かってきた。

睡眠中の脳は起きている時と同じくらいあるいはそれ以上に活動的。

世界中の研究者が眠りの秘密を解き明かそうとしている。

[番組内容(目次)]

[序章]

[野鳥の眠り]

[乳児の記憶と眠りの関連]

[大人でも記憶するには眠りが重要]

[睡眠不足は脳の損傷と同じ?]

[睡眠と食欲]

[夢の持つ役割]

[睡眠と記憶の関係]

[夢が教えてくれる脳の謎]

[睡眠研究で解き明かすアルツハイマー病]

[終章]

[独り言]

[解説]

(番組放送順と多少前後有り)

[序章]

眠りについての新たな発見は私たちの生活を変えることになるかもしれない。

眠っている間の脳の活動が、目覚めている時の脳を動かす。

番組で紹介する実験はショパンの演奏や人形、眠らない街ラスベガスから山奥の隔離された部屋までおよぶ。

人はなぜ眠るのか、その謎に迫る。

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[野鳥の眠り]

ニールス・ラッテンボルグ博士の話し。

ドイツ南部ミュンヘンの郊外に世界有数の研究施設であるマックスプランク研究所がある。

ラッテンボルグ博士はこの施設で、人はエネルギーを補充するためだけに眠るのではないということを示す手がかりを発見した。

博士の研究対象は人間ではなく鳥。

鳥は睡眠を研究する対象として格好の生物。

睡眠のパターンが私たち人間を含む哺乳類と似ている。

博士は鳥が私たち人間と同じように深い眠り(=ノンレム睡眠)と浅い眠り(=レム睡眠)をとることを突き止めた。

研究対象はカナダガン

この鳥から進化が鳥にもたらした手がかりを見つけ出した。

その手がかりとは、


 今、カナダガンが羽毛に顔を埋うずめて眠っている。

目を閉じているように見える。

そしてゆっくりとカナダガンに近づいて行ってみる。

ある程度の距離の所でカナダガンは薄目を開け、その直後に首をもたげ目を見開いて起きてしまう。

何度やってもそばに行くと必ず目を覚ます。

そして逃げてしまう。

離れるとまた目を閉じて眠り始める。


博士はカナダガンが近づくモノから逃げることができるのはまさに進化の賜物だと言う。

カナダガンは「半球睡眠」と呼ばれる眠り方をしている。

クジラやイルカなど海の哺乳類と同じ。

脳の半分は完全に覚醒していて、もう片方の目は開いているのにもう片方の脳はぐっすり眠っていて目も閉じている。

これを知った博士は眠っている脳の中で起こっていることが生命を維持するためには不可欠なものであると確信した。

そして、そう考えるのは彼だけではない。

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[乳児の記憶と眠りの関連]

ルール大学 児童心理学 サビーヌ・シーハーゲン博士の話し。

彼女は車で度々研究対象の家を訪ねる。

その研究対象とは乳児。

乳児は起きている時より寝ている時間の方が長く、睡眠時間は1日最長16時間にも及ぶ。

はっきりと起きている時間はせいぜい1・2時間。

鳥の研究から睡眠には極めて重要な役割があることがわかっている。

博士は睡眠が乳児の記憶の定着や保存に役立つことを確かめたいと考えている。


 子供は生まれてからの二年間に多くのことを学ぶ。

毎日、少しずつ学んで驚くべき成長を遂げる。

博士たちは、睡眠が記憶の整理をするのではないかと考えた。

そこで博士は乳児に三つの関連する動作を見せて覚えてもらうという実験を行った。

まずはぬいぐるみの人形。


実験では人形を使って三つの動作を見せる。

1)ぬいぐるみから手袋を外す。

2)手袋を振る

3)そして手袋を元に戻す

博士の狙いは脳の記憶を処理するシステムを刺激すること。

記憶を司る海馬という領域は脳の奥深くにある。

また、脳の外側にある大脳新皮質で脳内に蓄えられた記憶同士の関連付けが行われる。

博士と助手のキャロルは別の家庭の乳児でも同じ動作を見せた。

その後、何人かの乳児はそのまま起こしておき別の子供たちにはすぐに昼寝をさせた。

この実験によって眠る直前に得た情報を睡眠中に脳が何か特別な作用をしているかどうかを確かめることができる。


睡眠が本当に記憶を定着させることに役立つのなら学習をした後すぐに昼寝をした乳児だけが三つの動作を覚えているはず。

一方、昼寝をさせなかった方の乳児は覚えていないのではないかと考えた。

果たして昼寝をしなかった乳児は90秒以内に先ほどの三つの動作をできるだろうか。


昼寝をしていない乳児は動作を覚えている様子がない。

別の昼寝をしなかった乳児で試してみてもやはり同じ。

でも昼寝をしていない乳児には私たちが見せた動作を記憶した様子が全く見られなかった

4時間の昼寝から目覚めた乳児に同じことを試してみる。

促されなくても昼寝をした乳児はすぐに先ほどの動作を始めた。

博士は200人以上の乳児を対象にこの実験を行い、これと同じ結果を得た。

この実験で驚くべきことが分かった。


研究を始める前は睡眠が乳児の記憶にとって重要なのかどうかわかっていなかった。

数年前までは乳児は記憶を維持できないとさえ考えられていた。

でも研究で睡眠が初期の記憶処理に極めて重要な役割を果たしているということがわかった。

つまり乳児が長期間記憶を保つためには睡眠が欠かせないということ。

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[大人でも記憶するには眠りが重要]

ハーバード大学のジョージ・コーが行おうとしているのはピアノの演奏の一夜漬け。

彼は、ショパンの「スケルツォ第3番」を覚えようとしているが時間が足りない。

満足な練習ができないうちに演奏の本番が明日に迫り彼は解決策は一つしかないと考えている。

今夜はおそらく徹夜でこのまま朝を迎えることになりそう。

しかし乳児が記憶の処理に睡眠を必要とするのであれば大人でも同じなのではないだろうか。


 ハーバード大学 医学大学院 ロバート・スティックゴールド博士の話し。

スティックゴールド博士は大人の記憶に対する答えを見つけようとしている。

記憶の処理に睡眠が必要かどうかを突き止めるために博士は学習能力と運動機能の両方をはかる方法を考えた。

それはショパンの「スケルツォ第3番」の演奏を大幅に単純化した動きでキーボードの1234に指を乗せ決まった数列を繰り返し打ち続けるというもの。

それを二人の被験者にほぼ同時に行ってもらう。

そして二人ともこの作業を2回行う。

ただし、一人は一回目の作業の後に睡眠を挟む。

もう一人は眠らずに二回目の作業を行う。

そして二回目にどちらがより早く正確に打ち続けることができるかを比較する。

たった一晩の睡眠で数列の覚えが良くなり早く打てるようには思えないが果たして。


翌朝二回目の作業を再開する。

どちらがより進歩したのか。

眠らずに続けて二回目を行った方の結果は一回目と比較して進歩はほとんど見られない。

一方、睡眠した方はスピードが急激に伸びていた。

博士によれば「学習をしているのは何も学者や研究者だけではなく一般の人も同じ」

例えば車のエンジンをかける時どれくらいキーを回しアクセルをどれだけ踏み込むのがいいかといった単純な動作でも学んでいる。

無意識のうちに私たちは常に学習している。

学習した後に眠ると脳に記憶が定着し後でそれを容易に引き出せるようになる。

学習内容が複雑であるほど睡眠による効果は大きくなる。

しかし、十分な睡眠をとらないと情報が保存されない。


学習した日の夜に十分な睡眠をとらないと たとえ翌日からどれだけ寝たとしても睡眠による効果は現れない。

学習したその日の夜に眠らなくてはならない。

つまり日々学習したら寝ないと全てが無駄になってしまうということ。

人間は寝ている間に多くのことを学んでいると言うと皆それは間違いで、寝ている間に学習なんてできるはずがないと思う。

しかし、これこそが進化した脳の働き。

脳は眠っている間に記憶に関わる最も高度な作業をしていると博士は考えている。


前述のジョージ・コーはピアノの演奏の練習した後で徹夜するのを止め睡眠を撮ることにした。

そして翌日彼は、ショパンの「スケルツォ第3番」を引きこなすことが出来た。

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[睡眠不足は脳の損傷と同じ?]

睡眠は学習能力を高めることが分かった。

では睡眠は食欲もコントロールすることができるのだろうか?

今、その詳しい研究が進んでいる。


 そちらを紹介する前に、眠らない街ラスベガスを見てみる。

人はなぜ眠るのかを知りたいならここに勝る場所はない。

期待と引き換えに睡眠を犠牲にしても良いと思える場所といえばラスベガスのカジノ。

しかし、私達はこの街以外でも睡眠を犠牲にしている。

ついつい気づかないうちにわずかな利益のために貴重なものを失っている。


アリゾナ大学 精神医学教授 スコット・ギルゴア博士の話し。

ギルゴア博士はアメリカ陸軍の中佐でもある。

博士は前線で戦い負傷した兵士を治療したことをきっかけに睡眠について新たな視点で研究を始めた。

これまで睡眠の研究では睡眠不足や眠過ぎが人の反応や認知機能に及ぼす影響が気にされ判断力に及ぼす影響については研究が進んでいなかった。

戦場では引き金を引くかどうかと言った判断は兵士に任されている。

ギルゴア博士は緊迫した状況の中で、睡眠不足が判断不足に及ぼす影響について知りたかった。


一般的に自分の気持ちに従えば悪い選択をしないことが多い。

大抵の場合は良い選択へ導かれる。

人は毎日たくさんの選択をする。

その多くは直感的な判断。

直感は特殊な記憶、つまり感情を伴う記憶によって導き出される。

人は何かを経験すると脳がそれがポジティブな経験かネガティブな経験かを判定する。

こうした感情を伴う記憶が後に何かの決断を下すときに助けになる。


SFドラマ「スタートレック」を見るとどんな場面でもスポックは論理的な意思決定を行う。

彼はコンピューターのように感情に左右されずに決定を下す。

それに対してカークは直感に従って判断し正しい指令を出す。

直感を生み出す脳の働きを調べるため博士はギャンブル方式の独創的な実験を考え出した。


博士の考案した実験では四組のカードで勝負をする。

被験者には できるだけたくさん儲けようとし、なるべく損をしないようにと伝える。

このとき被験者には知らされていなかったが、実は四組のカードのうち二組は大儲けできる一方で、それを上回る大損をする危険が潜んでいた。

後の二組は儲けも少ない代わりに損も少なくて済むようになっている。

儲けを出すために被験者は直感に従って正しい判断を下さなくてはならない。


一度目の実験の後、街へ繰り出して一晩中寝ずに満喫してもらう。

およそ100年前人間の平均睡眠時間は9時間だった。

今は7時間弱に減っている。

現代人が陥っている深刻な睡眠不足の状態になるためにはカジノで過ごすの一番手っ取り早い。

一睡もせずに戻ってきた被験者は疲れ具合が10段階のうち9ぐらいの疲れ具合。

24時間一睡もしていない状態で先ほどと同じ四組のカードゲームを行う。

今回はそれぞれのカードの内容が覚えられず、集中力も長続きしない様子。

前回は1200ドル儲けたのに今回は800ドルのマイナス。

このような結果になった理由は、脳の「前頭前野腹内側部(ぜんとうぜんやふくないそくぶ) 」にあった。


「前頭前野腹内側部」は、感情を伴う記憶が論理的思考と一つになり意思決定をする場所。

脳の中でも極めて重要な部分で通常は活発に働く。

ところが24時間一睡もしていなかったため機能しなくなっていた。

この部分が働かなくなると感情を伴う記憶を使って意思決定をすることができない。

そのため判断力が損なわれてしまったと考えられる。

結果を見ると直感に従って判断できていない。

儲かるカードと損をするカードの区別が出来なくなってしまっていた。

直感で意思決定をする能力が損なわれて混乱してしまったようだ。


博士は同じような判断力の低下は脳卒中によって脳の同じ領域に損傷を受けた人にも見られる事に気づいた。

寝不足は脳が一時的に損傷を受けたようなもの。

健常者の場合は一晩眠れば元に戻る。

博士は睡眠と意思決定を司る脳の仕組みを解明しつつある。

まだ全てが明らかになったわけではないが私たちの研究結果は睡眠時間を2時間ほど減らしただけで脳の機能に変化が生じ、判断力の低下など生活全般に影響が出ることが分かっている。

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[睡眠と食欲]

コロラド大学 睡眠・時間生物学研究所所長 ケン・ライトの話し。

コロラド大学実験施設では二年前から複数のボランティアが被験者として暮らしている

一回の実験期間は2週間。

彼らは外界から隔離された実験室で寝て食べて勉強するを繰り返す。

行動は全て注意深く観察され昼寝の時間も摂取カロリーも全て測定される。

博士は睡眠不足が一時的な脳の損傷を引き起こすのであれば脳によって制御されている他の働き、例えば食べる量を調整する機能にも混乱が生じるのではないかと考えている。


 太り過ぎの人は世界で大人が15億人。

就学年齢の子供が1億5000万人。

就学前の子どもで4300万人にのぼる。

また、アメリカでは成人の半数以上が7時間を下回る睡眠しか取っていない。

博士は過渡の睡眠不足が体重にどのような影響を調べるために隔離に近い実験室を作った。

最初の一週間 ひとつのグループは一晩に9時間寝ることが許される。

彼らは好きなだけ食べることもできる。

次の一週間から条件を変える。

睡眠時間を半分近くに減らし一晩に5時間しか眠らせなくする。

睡眠時間が半分になり数日が経過すると被験者の食べる量が増えていることがわかった。


食事だけではない被験者たちは間食が大幅に増加していることが分かった。

彼らは朝昼晩の食事の時より夕食後にたくさん食べる。

1日3食ではなく4食食べているのと同じ。

さらに博士が注目したのは食べる量をコントロールする二つのホルモンへの影響。

それはグレリンとレプチン(=飢餓ホルモン)と呼ばれるもの。

グレリンは脳に食べたいと信号を送る。

レプチンは体に十分なエネルギーが蓄えられると食べるのを止めるよう脳に伝える。

睡眠不足は人間の体重を調節するシステムのバランスを崩す。

通常食べ過ぎるとグレリンとレプチンの両方が脳に食べるのをやめるよう指令する。


ところが睡眠不足になるとこのメッセージが脳に届かなくなる。

被験者の人たちの体重は増えていった。

睡眠時間を半分にしてから僅か5日で800g増えた。

これまで睡眠をとる目的は、単に昼間はっきりした頭でものを考え最良の状態で行動できるようにするためだけだと考えられてきた。

しかし、今では睡眠不足は太るリスクを高めることが分かっている。

睡眠時間を減らしても大したことはないと思っている人が多いが、そういう人は長期的な影響を考えていないのだと思われる。

睡眠が足りないと心臓病や肥満になるリスクを増やしてしまうことになるのだ。

睡眠は私たちの体重を調節し判断力にも影響を与えることが分かった。

では脳が制御をするもうひとつの重要な仕組み夢についてみていく。

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[夢の持つ役割]

モントリオール大学  理学教授 アントニオ・ザドラ博士の話し。

ザドラ博士は、子供の頃からずっと夢に興味を持ってきた。

人類は昔から夢に魅了されてきた。

夢はどこでどのように作られるのか。

ザドラ博士は、夢には意味があるのかということを知りたかった。


 私たちが一生のうちに夢を見る時間は5万2000時間。

丸6年になると言われている。

博士は、この膨大な夢の時間の中にその役割を知るヒントがあると信じている。

夢の秘密を解き明かすために博士は まずこの神秘の世界に入る方法を見つけなくてはならなかった。

その鍵となったのは芸術家のジェームズ・サイモンのような人達だった。

サイモンはおよそ100人からなるユニークなグループ・ドクターザドラーの「ドリーマー」のメンバーの一人。


サドラー博士はサイモンのような人たちから1万回分の夢の話を集め、それを分析している。

その結果「女性は男性より悪夢を見ることが多い」

また女性は「人間関係について」男性は「災難についての夢を見る」傾向があることがわかった。

さらに夢からその人の精神状態がわかると言う。

夢の中で否定的な感情を感じたり、誰かと敵対関係になればなるほど その人の不安感や絶望感が強いという傾向がある。

つまり博士によれば夢は偶発的に脈絡なく生じるものではないということ。

人の夢を分析すると そこには思った以上に秩序があることがわかった。

目が覚めている時に起きたことと夢の内容は繋がっている。

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[睡眠と記憶の関係]

ハーバード大学 医学大学院 ロバート・スティックゴールド博士の話し。

博士も起きている間の生活と夢の関係は夢の役割を知る重要な手がかりになると考えている。

私達は大抵夢を見ている間に昼間に起きた出来事の意味を読み解いている。

スティックゴールド博士は睡眠中の脳内では会話が交わされていると言う。

私たちが眠りにつくと その日 一日の間に海馬に蓄積された記憶は海馬から大脳新皮質へ送り出され そこで他の記憶と関連付けられる。

私たちが夢を見ると大脳新皮質はフル回転する。

大脳新皮質は最初のレム睡眠のサイクルで海馬に対して「それは先月起きたことに似ているね」などと伝達する。

そうすると脳の前方から海馬に対して「それは確かだが それは重要じゃない」とか「これは重要だ」と言ってその情報をどう処理すべきか指示する。

そして、大脳新皮質は様々なことがうまく収まるように合成する。


 複数の記憶を結びつけて意味を持たせるために夢が一役買っていることを確かめるためスティックゴールド博士はユニークな実験を考案した。

まず、博士は数人のグループに迷路を通り抜ける訓練をし半数だけに仮眠を取らせた。

その後全員に迷路に挑戦してもらうと仮眠をとった人たちの方が早く出口を見つけた。

中でも博士が注目したのは仮眠を取った時に迷路の夢を見た人たちで、彼らは10倍も早く出口を見つけた。


実験で明らかになったのは夢は睡眠中に脳が処理している情報を映し出しているということ。

私たちは眠っている間にも意識があり脳が物語として形作っているものを見ているとも言える。

例えるなら映像編集者の肩越しに画面を覗き込んでいるようなもの。

編集前の映像と同じように夢にも脈絡がない。

色々な所から集められ ただ並べられている映像が再生されている。

私たちが夢を見るのは脳がそれらをどう組み合わせようかと考えているからなのかもしれない。

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[夢が教えてくれる脳の謎]

モントリオール大学 心理学教授 アントニオ・ザドラ博士の話し。

スティックゴールド博士によれば睡眠中の脳は日常の様々な出来事に意味を与えている。

またサドラ博士は混沌とした状態の夢から何らかのパターンが見出せれば、その人の精神状態も明らかになると指摘している。


 被験者はザドラ博士からあらかじめ夢日記をつけるように指示されていたためこの6週間夢の内容を書き留めてきた。

日記の内容を見なから博士は日記の中の登場人物や状況・設定・社会的な交流といった面から夢の内容を数値化してみる。

博士は日記を書いた人の個人的なことを知らないはずなのに「水漏れするパイプの夢」から被験者が問題解決に不安を抱いていることを言い当てた。

水浸しになるというのは災難。

自分に落ち度がないのに被験者は治そうとする。

また、水を拭き取ろうとして何とか被害を最小限に食い止めるとする。

あるいは自分のできる範囲で事態の収拾を図ろうとする。

ザドラ博士は被験者の外見や自分の仕事の価値について不満を抱いていることを見抜いた。


また、被験者の夢の半分以上は動物が関係している。

それらの動物との関わり方から被験者は「動物の幸せをとても気にかけている」と推察した。

飼っている犬や猫だけでなく全ての動物の幸せを望んでいると分析したのだ。

この経験を通じて夢のパワーや夢のパターン、夢からその人の心理状態まで推し量れるということがよくわかったのではないだろうか。

人間の体・心の状態と夢の内容・パターンの間には関係がある。

夢の世界だけでなく眠りは脳に関する最大の謎を解き明かしてくれるかもしれない。

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[睡眠研究で解き明かすアルツハイマー病]

オレゴン健康科学大学 神経科学者 ジェフ・アイリフとロチェスター大学の研究チームの話し。

地球上のほとんど全ての生き物は眠る。

この眠りが、起きている間の私たちの生活全体にいかに影響を与えているのかが分かってきた。

しかし研究者が解明できない謎が一つある。

アイリフと研究チームはアルツハイマー病を発症の主な原因であるたんぱく質について研究してきた。

脳内では「アミロイドβ」というタンパク質が絶えず作られている。

人が起きている間はそのレベルが高くなり、夜眠っている間に下がる。

その理由を突き止めるためアイリフ博士はこれまでほとんど前例のないことに挑んだ。


 それは睡眠中の脳を直接観察するというもの。

非常に高性能で特殊な顕微鏡を使うと生きている脳の活動を見ることができる。

博士が観察するのは脳の中枢、奥深くに入り込ん細胞に栄養や酸素を供給する血管の複雑なネットワーク。

しかし、そこでは全く予想外のことが起きていた。


夜になると脳は変化し始める。

脳に栄養を運ぶ細胞が縮んでいる。

アイリフ博士の研究チームは脳内の老廃物がいかにして排出されるのかという大きな謎を知る手がかりを見つけた。

体内には血管が川のように流れていて、体を形作る数十兆個もの細胞に栄養を送り届けている。

しかし、これらの細胞は老廃物を排出する。

川ではゴミが底に沈むが、人の体内では老廃物はリンパ管に回収されそれは血流を通じて肝臓などに運ばれて処理される。

しかし、脳にはリンパ管がない。

では脳はどうやって老廃物を排出しているのだろうか。


その答えは睡眠中の脳に起きている変化にあると博士は考えている。

昼間、脳は「脳脊髄液」と呼ばれる体液が入った袋につつまれるようにして守られている。

しかし、夜間はこの袋から脳脊髄液が出てきて、脳内に広がることを博士は突き止めた。

脳脊髄液は血管を伝って脳の隅々まで行き渡る。

博士の研究チームはこの脳脊髄液から謎を解明する手がかりを突き止めた。

脳脊髄液は血管を通って脳の組織の間を流れながら脳細胞に溜まった老廃物の粒子をきれいに洗い流している。

脳は老廃物の掃除を昼間はやることがたくさんあるので夜に回していると考えられる。

しかも血管というひとつのものを使って二つの作業を行っている。

栄養の供給と老廃物の除去の両方。


このような方式をとっているのは脳だけ。

脳の浄化システムと言える。

博士の仕事はこれだけでは終わらない。

アミロイドβの謎の解明が残っている。

アミロイドβは脳が排出する老廃物のひとつ。

アルツハイマー病の患者の脳にはこのタンパク質が蓄積されることが分かっている。

博士が研究始めた当初はなぜアミロイドβのレベルが昼間に上昇し夜間に低下するかわからなかった。

しかし研究の結果その理由が明らかになった。


脳は睡眠中にこの危険なタンパク質を洗い流していた。

では、この発見からアルツハイマーについて何がわかったのだろうか。

この老廃物を洗い流すシステムが働くなくなることがアルツハイマー病の原因の一つかもしれないということ。

睡眠の質の低下や時間の減少はいずれも脳内の蓄積するアミロイドβの増加と関係がある。

脳が睡眠中にこれらのゴミを掃除し部屋を綺麗にしていないとアルツハイマーのような病気になるような要因を作ることになる。

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[終章]

睡眠中の脳の働きが私たちの活動のほぼ全てを支えていた。

睡眠は生きる上で非常に大切で、体の全てに影響を及ぼす。

眠っている間の脳の活動が目覚めている時の脳を動かす。

寝ている間に脳が働かなければ起きている時も脳は力を発揮できない。

私たちは眠っている間に人生を形作っている。

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[独り言]

トラウマやPTSDを持つ人は夢を恐れる傾向がある。

そう言った人たちのためにも夢を含めた睡眠の研究はデメリットをメリットに変えるためにも重要と思える。

トラウマやPTSDの人は夢を見ることで恐怖体験や不安が高まり嫌な記憶を繰り返し追体験することで身も心も消耗してしまう。

感情で生きる様に進化した代償として得た、というより得てしまったのがトラウマやPTSDと思っている。

筆者も幼児期に交通事故に会い、そのときのトラウマのため夢遊病(睡眠時遊行症)になり夜間意識が無いまま道路を徘徊していた。

十代後半まで覚えている夢のほとんどは四階建ての建物ほどもあるタイヤに押しつぶされそうになる夢。

何十年もたった今、その夢を見ること(覚えていること?)はなくなったが十代の頃に見た恐ろしい夢の記憶は未だに持っている。

おそらくではあるが夢の中での恐怖体験・不安体験の繰り返しは逃れる術を探している旅の様なものかもしれない。

もう終わってしまって取り返しがつかないやり直しがきかない事でも人は夢の中では何とかやり直そうとするのかもしれない。

その生理的メカニズムがかえって本人を苦しめると言うのは進化の過程で得たものとはいえメリットがデメリットになってしまっている。

今ではカウンセリングという概念があり恐怖体験後のケアが進んできているとはいえ こういった不安に苦しむ人は未だにいる。

夢と眠りのメカニズムが分かることでケアを推し進めることが出来るのではないかと期待している。

余談 [個人的見解]

事故だけでなく事件・震災・テロなどの恐怖体験を受けた人たちもトラウマ・PTSDに悩む。

多くの場合は恐怖や不安を心の中に押し込めようとする「インナーチャイルド」という心の状態が引き起こしてしまうと考えられる。

ここで呼び名・概念は「インナーチャイルド」とされているが成人してから もっと言えば高齢化してからでも恐怖体験した人たちは「インナーチャイルド」という状態になる。

心の中に押し込めようとすると 体験をしたときの年齢のままの心の状態が深層心理≒無意識に擦り込まれ何かの拍子に意識へと浮上してきてパニックに陥る。

そうならないためにも恐怖体験をしたらなるべく早く「もう大丈夫」と教えてあげることが重要。

そうしないと長く苦しむ事になり、その苦しみの形を別の形で紛らわせるために脳は別の苦しみを与えようとする。

それは、例えば必要のない痛みや恐怖心の芽生えといった物であることが多く新たな苦しみとなる事が多い。

繰り返しになるがトラウマ・PTSD・インナーチャイルドに苦しむ人がいる以上、眠りと夢に関する研究が進み苦しみが取り除かれる日が来る事を願う。

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