NHK Eテレ「『無』とは何か」番組まとめ

2018年

NHKで放送されている「モーガン・フリーマン 時空を超えて」

テーマは「『無』とは何か」

『無』それは万物の始まりでもあり、終わりでもある。

しかし『無』の正体は何なのだろうか。

実は『無』の空間は、隠れた力に満たされているのかもしれない。

この宇宙を生み出した力、私たちが現実と呼ぶものを打ち砕くかもしれない力。

『無』とはいったい何なのだろうか。

[番組内容(目次)]

[序章]

[モーガンフリーマンの話し]

[空っぽの空間に実態が]

[宇宙の崩壊を防ぐもの]

[真空を満たすエネルギー!?]

[まもなく宇宙は崩壊する!?]

[全ての情報が空間の表面に?]

[互いに見知らぬ2つの世界]

[ビッグバン以前にも存在が?]

[モーガン・フリーマンからのメッセージ]

[解説]

(番組放送順と多少前後有り)

[序章]

『無』、神はそこから天と地を創造されたと聖書には書いてある。

現代の科学者も似たような考え方をしている。

それは『ビッグバン』

しかし、何もないところから どうやって生まれるのだろうか。

『無』の正体を突き止めることは現代の科学における最大の難問かもしれない。

それが解ければ、この宇宙がどう誕生したのか、この愛すべき世界が再び『無』に還っていくのかが分かるかもしれない。

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[モーガンフリーマンの話し]

子供の頃、完全な『無』を体験しようと思い、目を閉じて真っ暗闇の中を漂うことをイメージした経験がありませんか。

私にはあります。

しかし、いつもうまくいきませんでした。

心臓の鼓動や脳裏に浮かぶ雑念を追い払い、『無』になることができませんでした。

そもそもイメージするということは何かを思い浮かべる好意ですから、『無』を体験するということとは矛盾していました。

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[空っぽの空間に実態が]

NASA (航空宇宙局) 物理学者 スラバ・トゥリシェフの話し。

彼は『無』に心を惹かれ、『無』の空間を訪れてみたいと思ってきた。

彼の生まれ故郷はバイコヌールというロケット発射基地の近くにあり、ロケットの軌道の真下にあった。

そんな環境に影響を受けて彼はロケットを作り、からっぽの宇宙空間を旅することを夢見るようになった。

しかし彼は別の運命を辿ることになった。


 当時はロシア版スペースシャトルのための宇宙飛行士が要請されていたのでそれに参加するつもりだった。

でも1990年代に計画が中止されてしまった。

彼は宇宙のチケットを手にすることができなかった。

しかし彼は物理学者として宇宙であれ地球上であれ空間の基本的特性は変わらないことに気づいた。


地球上では空間が空っぽではないだけ。

しかも空間の特性を調べるのに10億ドルをするロケットは必要ない。

バケツ一杯の水があれば十分。

単純な実験を試みる。

まず鉄棒に紐でバケツを吊り下げて水を入れる。

アイザックニュートンが考えた実験。

このバケツを回転させて水がどうなるかを見る。


分かりやすくするために色のついたインクをバケツの水の中に少量たらす。

バケツを回す前は安定した状態で水面は平ら。

バケツを回転すると水はバケツの回転と同じ速度で回り始めるはずとニュートンは考えた。

しかし最初のうち水はバケツとは一緒に動かない。

やがてバケツの内壁との摩擦によりバケツの中で水がゆっくりと上がる。


バケツが回りだしても水はすぐに一緒には動かなかった。

水を押しとどめている何かが存在するはず。

ニュートンは気づいた。

その何かとはバケツの内部そして この世界のいたるところに存在する空間と彼は結論付けた。


空間は『無』ではない。

そこには何かが存在し物体の動きに影響を与えている。

ニュートンは何もない空間が意味のある何かであることまでは解明できなかった。

しかしアインシュタインが一般相対性理論を発見したことでニュートンの考え方が基本的に正しかったことが証明された。


空間やアインシュタインの言う時空とはこの宇宙に存在するすべての物質が編み込まれた織物。

空っぽの空間にも実態があると言うアインシュタインの理論はすでに実証されている。

トゥリシュフは宇宙のナビゲーションシステムを開発しているが、そこでもアインシュタインの一般相対性理論が考慮されている。

いまやナビゲーションの精度はアポロ時代よりも格段に進歩している。

例えば宇宙飛行士を火星に送るなら宇宙船が着陸した地点に降り立つのが理想。

そのためには一般相対性理論を考慮したナビゲーションシステムが必要。

さもないと宇宙飛行士は火星の表面を何キロも歩く羽目になる。

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[宇宙の崩壊を防ぐもの]

私たちの世界を隅々まで満たす空間は そこに存在するあらゆる物質と何らかの相互作用をしている。

惑星からバケツの水や書類の山まで。

空っぽの空間には大きな力があるようだ。


 英国・オックスフォード大学 素粒子物理学者 フランク・クローズの話し。

彼は空っぽの空間が持つ力について研究している。

これからある実験を行う。

金属製のドラム缶の中から真空ポンプで空気を吸い出し真空にする。

それによって手を触れずにドラム缶を潰してしまう。

利用するのは『無』の力。

ある一定の量まで真空ポンプで空気を吸い出すと一瞬にしてドラム缶は潰れる。

ドラム缶の中の空気を抜き取ると大気が1平方メートルあたり10トンの圧力となって襲いかかる。


金属製の頑丈なドラム缶といえども耐えきれない。

ドラム缶を潰すことは空っぽの空間が持つ力のごく一部に過ぎない。

もっと様々な可能性があり物質がすること全てに関わっている。

19世紀には空気を抜けば完全な真空ができると考えられていた。

しかしその考え方は量子力学の登場とともに否定された。


量子力学の不可解な性質により特定の時刻にどれだけのエネルギーが真空に存在するか正確には分からない。

非常に短い時間にエネルギーの貸し借りや受け渡しが行われるから。

現在の量子力学によれば真空とは実はとても騒々しい場所だと考えられている。

空っぽの空間は実は溶鉱炉のようにエネルギーに満ちている。

クロースによれば、そのエネルギーが一種の壁になり世界に存在する基本的な力の強さを理解しにくくしている。

例えば電気を帯びた粒子の間に働く反発力。


二つの電子の間に働く力を測定するとする。

両者が近づくほどその力は大きくなる。

しかし正確な値を測定しようとすると空間の持つ特性が邪魔をする。

量子力学によれば この世界は物質と反物質が絶えず生成してペアになって消滅する「量子真空」と言う物に隅々まで覆われている。

電子にも量子真空の覆いがかかっている 。

そのため電気的な力が弱められていて正確な値が測れない。

しかしスイスのジュネーブにあるような巨大な加速器を使えば話は違う。


そこでは二つの素粒子を時速10憶kmを超えるスピードで衝突させることができる。

するとふたつの素粒子はエネルギーの覆いを突き破り極限まで接近する。

素粒子を覆っている雲が混ざり合い最終的には散ってしまう。

そして裸の電子が裸の電子に作用する様子を観察できる。

その電気的な反発力は想像以上にドラマチックなものであることが分かった。

遮光眼鏡が 溶接中の激しい光から作業者の目を守るように空っぽの空間は自然界の激しい力からこの世界を守っているのだとクロースは考えている。

もし電子の周りの覆いが簡単に外れるようなら「量子真空」がもたらしている保護作用も無くなっていただろう。

そしてむき出したエネルギーがぶつかりあい宇宙は滅んでいたはず。

「量子真空」という存在があることでこの宇宙は成立している。


何もない空っぽであるはずの真空が素粒子本来のエネルギーを抑制することでこの宇宙を崩壊から救っている。

しかしそこには重大な問題がある。

裏を返せば真空の中には私たちの想像を超えるエネルギーが閉じ込められているはずだから。

実は空っぽの空間はいつ爆発してもおかしくない火薬庫のようなものかもしれない。

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[真空を満たすエネルギー!?]

量子力学は いわばこの世界の仕組みを最もミクロなレベルで解き明かす有力な理論。

その量子力学によれば空っぽの空間にこの世界を消滅させるほどのエネルギーが秘められている。

でも心配は無用、何かがそれを阻止しているから。

一体何が?


米・ニューヨーク大学 理論物理学者 ニール・ワイナーの話し。

彼はジュネーブにある巨大加速器 LHCによって作り出される素粒子のシャワーを研究している。

例えば二つの小石を陽子だと仮定する。

正反対の方向からこの二つを衝突させると衝突のエネルギーによって陽子の一部だったとは思えない新たな粒子が生まれる。

ワイナーの仕事はこのような新たな粒子を解明すること。

素粒子の衝突から生み出されるものの正体を探るためには奇妙な視点を持たなければならない。


固体を構成する最も小さな要素を固体ではないものとして考える。

新たに作り出された素粒子は粒子というよりも波のような状態になる。

ちょうど噴水のような感じ。

水が流れ落ち、波が生まれる。

その波は中心から広がっていく。

量子力学の世界において素粒子とは一方向へ進む粒子ではなく中心から広がる波。


池の水面に波紋が広がるように粒子の波は空間に広がっていく。

それはこの世界のありとあらゆるところに粒子の波紋が存在することを意味している。

空っぽの空間などないと言うこと。

そのように波打つ空間のエネルギーが宇宙を膨張させていると考えられている。


宇宙の膨張を観察すると銀河同士が互いに遠ざかり離れていくのがわかる。

しかも膨張のスピードは衰えず、むしろ加速膨張。

この現象を説明するためには真空そのものに何らかのエネルギーがあると考える。

そうであれば宇宙の膨張を加速させることができる。

物理学者はそれをダークエネルギーと呼んでいる。

まだ正体は分かっていないが宇宙の膨張を観察することでダークエネルギーの量を割り出すことができる。

しかし素粒子の波によって宇宙空間に生じるエネルギー量とは大きな開きがあった。


素粒子の波が生み出すはずのエネルギー量を計算してみると実際に宇宙を観察して得られた

数値に比べ10の120乗倍にもなった。

これはあまりにも大きな違い。

計算によれば宇宙も蒸発させてしまうのに十分なエネルギーが空間に存在していることになる。

しかし現実は違う。

理論上の計算値と実際の測定値の間に なぜこれほど大きな開きがあるのか素粒子の波は大部分は互いに打ち消し合っているのではないかとワイナーたちは考えている。


波の打ち消し合いは理解しやすい現象。

一つの波には山と谷がある。

別の波も同様。

二つの波が同じ位置で重なると山の高さは2倍にそして谷の深さも同じく2倍なる。

しかし二つの波がずれて重なると、波そのものが消えてしまう。

この現象が素粒子の世界で起きているのだと考えられる。


ワイナーの考えでは この宇宙には未知の素粒子がたくさん存在し、それらが既に知られている素粒子の波を打ち消している。

超対称性と呼ばれる理論で素粒子には鏡に映したようなパートナーがいることになる。

例えば電子=エレクトロンならスエレクトロン、クオークならスクオークというようにパートナーが存在しているはず。

しかしそんな超対称性パートナーも見つけるのは非常に骨の折れる作業。

直に探したり間接的に探したり色々な方法がある。

しかしまだ見つかっていない。

希望は捨てていないが、人によってはそんなものは存在しないという話も少なくない。

もし超対称性粒子が存在しなかったら物理学は大きな壁にぶつかり空っぽな空間に存在する莫大がエネルギーがなぜ宇宙を吹き飛ばさずにいるのか説明がつかない。

一方で大爆発は避けられないと言う意見もある。

ある科学者はそれが起きるかもしれない時期を導き出したと言う。

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[まもなく宇宙は崩壊する!?]

マサチューセッツ工科大学 理論物理学者 マックス・テグマークの話し。

空っぽの空間は『無』の大海のごとく宇宙に広がっている。

しかし、その海が いつまでも静かだとは限らない。

ある科学者によればいずれ嵐が来るという。


 空間が急激に別の状態に変化するなどありえない話に思えるが、実は前例がある。

137億年前宇宙の基本的特性が変化し温度が急激に下がった「ビッグバン」

テグマークはそこから恐ろしい結論を導き出している。

テグマークが仮に魚だとする。

一生を海で過ごし、海の水を空っぽの空間だと思っている。

その状態しか知らないから。

ある日テグマークは水が物質であることに気付く。

そして調べていくうちに水というものが温度によって氷になったり空気になったりする事実を知り不安に襲われる。

水が凍りついたら魚は生きていけないから。


同じように この空間も変化し、命は絶滅するということに気づいた。

空間の特性が急激に変化する現象はビッグバンが最後ではないとテグマークは考えている。

永遠に続く物など存在しないことを量子力学が教えているから。

量子力学によれば素粒子は決して一つの場所にじっとしていない。


量子力学の理論は素粒子からできたもっと大きなものにも通用する。

例えばゴルフボールにでも。

どんなものでも完全に安定した状態にはない。

量子力学の考え方で行くとゴルフボールも長い間ここにあればランダムに少しだけ跳ね上がりエネルギー状態がより低くなるように下に落ちる。

ごくわずかな可能性だが網で吊り上げられたネットの中にあってもゴルフボールが ひとりでに網(空間)を通り抜け、エネルギー状態がより低い地面に落下することもある。


物体が空間を通り抜ける場合、エネルギーの状態が低くなるところであればどこへでも出現することができる。

それこそカップの中にでも。

スイング無用の完璧なホールインワン。

しかしこれは宇宙にとってはよくないニュース。

空間そのものが状況によって異なったエネルギー状態を保つと言うかなり確実な証拠がある。


初期の宇宙はもっとエネルギー状態が高かった。

そこで存在したであろう素粒子も今とは違うものだったと推測できる。

ビッグバンが起きた初期の宇宙では急激にエネルギーが低い状態になった。

それが現在の宇宙。

とても穏やかで私たちを形作っている粒子があり生命が存在できる。

しかし宇宙のエネルギー状態が今よりもさらに低くなる可能性があると考えられる。

実際には空っぽではなくそれらもいずれはもっと低い状態に変化する。

そうなったら今の素粒子は存在できない。

もちろんその素粒子でできている私たちも。


空っぽの空間でエネルギー状態が急激に低下すると突風とでも言うべき現象が光の速さで宇宙に広がる。

その様子を観測する余裕すらない。

でも必ず起きて、今の状態がいつまで続くかよくわからない。


比較的安定した素粒子もある。

ウラン原子は今後何十億年何百億年と変わらないだろう。

しかし原子炉から漏れ出すセシウム137のような原子はもっと早く崩壊するので危険な存在。

この宇宙は140億年近く続いているがだからといって永久に続くとは限らない。

テグマークの推測では私たちに残された時間は長くてもあと200憶年。

それもニール・ワイナーが発見できずにいる超対称性粒子が 実在した場合の話。

もし超対称性粒子が空っぽの空間を安定させてくれなければこの世界はあと10億年ほどで終わりを迎えるだろう。

宇宙的な視点からすれば短い時間。

宇宙の始まりと終わりには何もない。

しかし『無』には別の見方も ある。

この世界は巨大な泡だという見方。

万物は泡の表面に張り付いているだけ。

そして内部は単なる無駄な空間。

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[全ての情報が空間の表面に?]

夜空に瞬く星々を見ていると、私たちと星との間にとてつもない距離があるようには思えない。

実際には果てしない『無』が広がっている。

しかし古代の人々は地球を取り囲む空のようなものがあり、そこに光の点がついていると思った。

そのころの世界観には宇宙空間など存在しなかった。

そんな考え方が廃れて長い時を経た今、それに近い宇宙論が復活しようとしている。


 オランダ・ユトレヒト大学 物理学者 ヘーラルト・トホーフト( ‘t Hooft )の話し。

素粒子物理学の基礎である標準模型と呼ばれる理論を構築し1999年にノーベル賞を受賞した

現代物理学の巨人と言って差し支えがない人物。

また『無』の支配者とも呼べる。

ほぼ『無』の支配者と読むべきだろうか。


トホーフトは遥か彼方を漂う小惑星の王様。

国際天文学連合が小惑星に「9491Thooft(トホーフト※1)」と名付けてくれた。

嬉しかったのだがただ弱ったことに名前の綴りが間違ってつけられた

大文字の T の後ろにアポストロフィーなしに hooft と綴られてしまった

それは正しくない

※1:小惑星9491トホーフトが発見された1971年は大学院生だったトホーフトがゲージ理論によって弱い力と電磁気力を統一しようとする試みに残されていた課題を1年で解いた年と同じ


トホーフトはこれにユーモラスな形でリベンジをした。

トホーフトは自身の名前が付いているので小惑星の王として即位し、法律を制定することにした。

最初の条文はこう、

「将来この小惑星に住むものはアポストロフィーを使わずに生活しなくてはならない」

「パソコン持参でこの小惑星に立ち入る者はキーボードにアポストロフィーがあった場合そのキーを取り除かなければならない」

トホーフトは小惑星の王としてアポストロフィーの使用を禁じた。

でもアポストロフィーの存在自体は消えない。

トホーフトによればい かなるものもこの世界から真に消し去ることはできない。

情報の保存と呼ばれる法則。


多くの人は紙に書いた情報はクシャクシャに丸めて捨ててしまえば消えてしまうと思うだろう。

しかし、ゴミの山を掘り返して つなぎ合わせることが可能である以上、そこに情報は存在する。

トホーフトのような物理学者はこの世の全ては1と0で表すことが可能だと考えている。

一枚の紙であっても巨大な星であっても違いはない。

しかしその理論が崩れる場所がひとつだけあって、それはブラックホール。

近くにあるもの全てを飲み込んでしまう貪欲な『無』の空間。


ブラックホールはどんなシュレッダーよりも優秀。

ブラックホールでは情報が切り刻まれるだけではなく、完全に消え去ってしまうと教わってきた。

1970年代 物理学者スティーブン・ホーキングはブラックホールは観測可能な宇宙から物質を完全に取り除き、飲み込まれた情報は永遠に消滅すると論じた。

この考えはトホーフトを悩ませた。

ホーキングの理論はトホーフトらの考え方に反するものだった。

当時明らかになっていた電子に関する知識からすると ある情報が完全に消滅するというのは物理法則に反することだから。


ホーキングは持論を曲げず、二人は意見を戦わせた。

そして、ある時トホーフトは重要なことに気づいた。

例えば小惑星「9491トポーフト」がブラックホールに吸い込まれた場合、跡形もなく消えるせるのではなくブラックホールをわずかに変化させる。

小惑星を飲み込む前と飲み込んだ後ではブラックホールの状態が変化する。

いわば違うブラックホールになる。

ブラックホールは何かを飲み込むと大きくなり表面積も若干広がる。

その広くなった分の面積にどれくらいの情報が納まるかトポーフトが計算したところブラックホールが吸収した分とぴったり吊り合うことが分かった。


ブラックホールに入り込む情報量は正確にわかる。

それがブラックホールの拡大する表面積に比例する。

ブラックホールの中身は関係ない。

重要なのは体積ではなく表面積。

この理論が正しければ ブラックホールに飲み込まれたものの あらゆるものの情報がブラックホールの表面に保存されることを意味する。

さらにトホーフトはそれがブラックホール以外にも当てはまることに気づいた。

三次元空間のいかなる場所においても そこに含まれる情報は全て空間の表面に保存されるということ。

全宇宙が収まるサイズの箱をイメージしてみる。

箱の表面にはマス目がついている。

箱の中にある情報は表面のマス目に張り付いている。

これまでに宇宙にした存在した情報の総量をそのマス目で数えることができる。

箱の中の大きな空間を扱うよりはるかに手がかからない。

原理的には可能。

宇宙で起きていることのすべてを箱の面だけを調べることで説明できる。

現在、物理学者の多くはトホーフトの説を支持している。

つまりこの宇宙の大部分は情報がないただの無駄な空間だということになる。

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[互いに見知らぬ2つの世界]

米・ミシガン大学 天体物理学者 キャサリン・フリース の話し。

一方『無』の概念にももう一歩踏み込んだ科学者がいる。

この宇宙の中に私たちにとっては『無』そのものでしかない、もう一つの宇宙が存在するかもしれない 。

目を閉じて一切音がしなかったら世界がそこにあると どうして言えるだろうか。

あるいは私の姿が見えず声も聞こえなかったとしたら どうして私が存在していると言えるだろうか。

つまり『無』と『有』の違いとは単なる知覚の問題かもしれない。


 フリースは物質を固体にしてるものは何か解き明かそうとしている。

私たちの身の回りにあるものは皆中身の詰まった固体のように見えるが実は違う。

例えばテニスボールも切ってみると中はからっぽ。

ほとんどの物質も同様。

砂糖の粒、これを原子核だとすると原子全体はテニスコートほどの大きさになる。

砂糖の一粒とテニスコートの外枠との間には何もない。

固体とは一種の幻想に過ぎない。


原子の外殻に位置する電子。

この電子の持つ斥力が物を固体に感じさせる。

この力が作用しないものなら固体を貫通できることになる。

天文学者は銀河の周りで光が曲がる現象を観測し、目に見えない何か巨大なものが取り囲んでいることを発見した。

そしてそれを形作っているものをダークマターと呼んだ。


ダークマターは見ることも触れることもできず固体を貫通することができる。

ダークマターには電気的な性質がないため降り注いできても全く気づかない。

実は毎秒何十億ものダークマターが私たちの体を貫通している。

フリースによればダークマターも通常の物質と同じように質量のある素粒子でできている。

しかし通常の物質と相互作用を起こすことがあったとしてもそれは極端に微弱なもので、検出することは極めて困難。


ラケットと砂糖の粒を使って暗黒物質が私たちの体をすり抜ける仕組みを説明してみる

通常の物質はラケットの網の目のように実はスカスカ。

砂糖をばらまいてもほとんど通り抜けてしまう。

それでも人体を貫通する暗黒物質の素粒子は数十億なのでそのうち2、3個のダークマターは原子と相互作用をするはずだとフリースは考えている。

しかしその微弱な相互作用を見つけ出すのは簡単なことではない。

感度の高い検出装置を使って実験が行われてきたが、まだ成果は得られていない。

ある実験では10年に渡り信号が検出されている。

統計的には意味のある結果だが、問題は他の実験と食い違っていること。

何も見つけられない実験もある。

理由はわからない。

フリースは ある望ましくない可能性を恐れている。

ダークマターは通常の物質とは全く相互作用を起こさないという可能性。

そもそもダークマターがごく稀にでも相互作用を起こすという証拠はどこにもない。

その場合ダークマターを見つける手段はない。


嫌な予想が当たった場合、この宇宙は通常の物質とダークマターの世界に完全に分かれていることになる。

両者は相互作用することがないので互いに全く無意味な存在。

互いにガットの張られていないラケットでテニスをするようなもの。

質量の面で宇宙の中で最も大きな割合をしめる存在が私たちにとっては『無』に等しいものになる。

『無』が支配する世界。


そもそもエネルギーも物質もなく時間も空間もない完全な『無』というものが本当に存在するのだろうか。

謎を解くヒントは宇宙の起源にあるのかもしれない。

その答えを見つけたという科学者がいる。

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[ビッグバン以前にも存在が?]

CERN 理論物理学者 ガブリエレ・ヴェネツィアーノの話し。

宇宙がビッグバンによって始まったという説は観測によってほぼ裏付けられている。

137億年前には『無』の世界だけが存在していた。

そこで爆発が起きて この宇宙が生まれたはず。

『無』から『有』が生まれるとはどういうことだろうか。


 ヴェネツィアーノは「ひも理論」の創始者の一人。

そして現在では「ビッグバンは全ての始まりではない」とする宇宙論の主流を覆すような理論を提唱している 。

彼はビッグバン以前には何もなかったと結論を出すのは早すぎたと言う。

そして同じ過ちを繰り返したくないとも言う。


ヴェネツィアーノによればビッグバン以前にも何かが存在していたが、その大部分は夜明けの街のように眠りについていた。

ビッグバン以前の宇宙には おそらく波や素粒子が 広がっていたと考えている。

ただしエネルギーの状態は非常に低いもので、それらの相互作用も極めて弱いものだった。

それは、街中を歩く人がほとんどいない状態に似ている。

存在しているが、関わり合うことはない。

言葉を交わすことはおろか、互いを感じることもない。

重力や電磁気力など自然界の基本的な力も存在していたが、今よりずっと弱かったと彼は考えている。

それらの力の強さはビッグバン以前には「ディラトン場」と呼ばれるもので決まっていた。

基本的な力の強さをコントロールする「ディラトン場」は徐々に目盛りを上げていきビッグバン以前の宇宙に様々なことが起こり始めた。

時間が経つにつれて街には人が増え始め互いに関わりを持つようになる。

人々は集まったり話したりしてあちこちに人の集団ができていく。

そして圧力が高まり相互作用が激しさを増して行くとやがて爆発「ビッグバン」が起きる。


彼にとってビッグバンは始まりではなく転換点。

この理論が正しければ『無』から宇宙が生じたと言うビッグバン理論の最大のパラドックス(矛盾)を逃れることができる。

ビッグバン以前にも何かが存在したと証明するのは難しくない。

ビッグバンで生じた巨大な重力波は、以前から存在していた空間や物質にもさざ波のように伝わったはず。

その重力波の痕跡をまだ観測可能かもしれないと考えている。

もし、その重力波を観測できればビッグバン直後の宇宙の状態を知ることができる。

それどころか彼の考えが正しければビッグバン以前の宇宙に存在したものについてもわかるかもしれない。

ビッグバン以前の宇宙から残る重力波が今も存在するならば私たちの周りの空間もわずかに押し広げたり押しつぶしたりしているはず。

その歪みを検出できる高感度の宇宙探査機が設計されているところ。

重要なのは観測や実験によって彼の仮説を論じることができる点。

ただの SF ではなく事実かどうかを科学的に検証できる。

彼の理論に基づき『無』など存在しないと証明される日が来るかもしれない。

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[モーガン・フリーマンからのメッセージ]

古代ギリシャ人は『無』は論理的にありえないと考えた。

『無』について考えたとたん意味のある何かになってしまうから。

科学者も数百年に渡り『無』について考えてきたが、結果的にはギリシャ人の正しさを証明したにすぎない。

無駄と思われてきた空間にも宇宙を滅ぼすほどのエネルギーが存在する可能性があるかもしれない。

何もない『無』というものは存在しないようだ。

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