NHK「万病撃退!”腸”が免疫の鍵だった」番組まとめ

2018年

NHK総合で放送される「神秘の巨大ネットワーク」

第四回のテーマは「万病撃退!”腸”が免疫の鍵だった」

今、腸で注目されているのが「腸内フローラ(腸内細菌)」

ダイエット・美肌・肥満解消で話題沸騰している。

その細菌を手なずけているのは体内の中でも腸だけ。

腸の神経細胞は脳に次いで多い一億個。

そのため第二の脳とも呼ばれている。

その神経細胞の働きで筋肉を操り、食べ物の消化吸収を独自に行うことが出来る。

シリーズ人体では様々な臓器が脳に頼らず活躍している事を伝えてきた。

その中でも腸は別格、まさに人体の中の独立国家。

実はその腸が私たちの命に関わる意外な役割をはたしていることが明らかになってきた。

それが『免疫をつかさどる』

インフルエンザ・食中毒はもちろん、あらゆる病気から体を守ってくれる大事な力。

その働きがおかしくなると花粉症・食物アレルギーや喘息などのアレルギー症状、さらにリウマチなどの自己免疫疾患など深刻な病を引き起こす。

この大事な免疫力を保つために腸が利用しているのが腸内細菌と免疫細胞。

腸は腸内細菌と免疫細胞を従えて全身の免疫をコントロールしている。

医学者をして『腸は全身の免疫力の源』『今世紀で最もホットな研究テーマ』と言わしめる。

『「攻撃して!」のメッセージを発し、万病と戦う力は腸にあり』


MCはタモリさんと京都大学の山中伸弥教授(iPS細胞研究でノーベル医学賞受賞者)

アナウンサーに久保田祐佳さん

ゲストに大リーガーの田中将大さん、タレントの小島瑠璃子さん。

[番組内容(目次)]

[序章]

[腸は人体の免疫本部]

[急増する免疫の暴走 ケース1]

[急増する免疫の暴走 ケース2]

[免疫暴走のメカニズム]

[日本人に秘められた腸能力]

[尾崎さんの多発性硬化症 その後]

[終章]

[次回予告]

[独り言]

[余談]

[解説]

(番組放送順と多少前後有り)

[序章]

腸の長さは成人男性で約8.5m

面積にして32平米でタタミ20畳分。

(腸の表面には絨毛(じゅうもう)と呼ばれるヒダがあり、それを伸ばした数字)

食べるという事は栄養が有るものだけが体に入るわけではない。

細菌やウイルスと言った体の害になる物も取り入れる可能性がある。

腸は体の中で最も外敵にさらされやすい場所。

でも、それを抑える仕組みを持っている。

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[腸は人体の免疫本部]

ゲストの田中投手は4年連続メジャー二桁勝利を達成している。

風邪などの病気で試合を休んだことは一度もない。

いったい何が彼の免疫力を高めているのか?


その秘密を探るために腸をミクロの世界で見てみる。

腸の表面は綺麗なピンク色で透明な粘液で覆われている。

拡大すると1mmほどの突起「絨毛」が並んでいる。

絨毛の内部には網の目の様に見える毛細血管が並んでいる。

食べ物の栄養は絨毛から吸収され、血液に乗って全身に運ばれる。

この腸の表面付近に住んでいるのが腸が従える腸内細菌と免疫細胞。

腸の表面を覆う粘液を拡大して見るとうごめいているものが見えるが、これが腸内細菌でその数約100兆個。

もう一方の免疫細胞は絨毛の内部にびっしりと詰まっている。

免疫細胞は病原菌やウイルスなどの外敵を攻撃し排除するミクロの戦士。

全身に2兆個いると言われている。

腸の中にはその7割を配備している。

腸は外敵の侵入から人体を守る門番。

だからこそ免疫細胞を集結させて体を病気から守っている。


腸が従えた免疫細胞はどんな時に敵の侵入を防ぐのか。

今 腸に病原菌がやってきた。

腸の壁の中で免疫細胞が異変を察知し「攻撃して」のメッセージ物質を放出、腸の壁がそれを受け止めると腸の壁から殺菌物質を放出する。

免疫細胞と腸の連係プレーで病原菌を撃退した。


腸の働きは病原菌の撃退だけでなく免疫細胞の訓練も行っている。

腸の表面をよく見るとおびただしい数の絨毛が見えるが その中に絨毛が無いくぼみがある場所がある。

このくぼみが訓練場への入り口。

入り口近くには腸内細菌や食べ物のかけらが漂っている。

腸内細菌がくぼみに捕えられると腸の壁の中に入っていく。

壁の中に入ると免疫細胞が多数存在している。

腸内細菌は突起だらけの運び屋細胞に取り込まれて、その後 免疫細胞とくっ付く。

免疫細胞は運び屋細胞の中にいる腸内細菌を仲間として認識。

逆に悪い腸内細菌の場合は敵として認識する。

こうして訓練を終えた免疫細胞は血液に乗って体中に派遣される。

山中メモ

腸と免疫に関する論文は毎週のように重要なものが発表されている。

腸はワザワザ細菌を取りこんで味方と敵を教えている。

同時に厄介な問題もある。

免疫が暴走する事でアレルギーになったり、自分自身の細胞を攻撃する病気が増えている。

その陰には腸の異常が疑われている。

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[急増する免疫の暴走 ケース1]

イギリス・ノッキンガム郊外に住むナターシャ・コーツさん22歳の話し。

彼女は幼いころからオリンピックを目指し数々の体操の大会で活躍してきた。

ところが4年前に原因不明の病気が発症した。

深刻なショック症状で病院への搬送は250回にものぼる。

彼女を苦しめる病は命に関わるほどのアレルギー。

自分の汗・涙・髪の毛の他に花粉・食べ物・薬・香水・シャンプー・煙・洗剤・ハウスダストなど身の回りのあらゆるものに反応してしまう。

今ではアレルギーのために髪の毛も抜けてしまった。

彼女が食べ物で安全に食べられるのはブロッコリーやジャガイモなど数種類だけ。

体の中では仲間の免疫細胞を異常に興奮させ敵でないものを攻撃させる物質を放出している。

そのため体の細胞にもダメージを与える深刻な症状を引き起こしていたのだ。

毎日25錠もの薬を飲むが症状を止められない。


彼女は いつアレルギーで命を落とすか分からない その恐怖と戦いながら暮らす必要がある。

何が免疫の暴走を招いているのか専門家が調べたところ腸の異常に気が付いた。

検査したのはナターシャさんの便。

検査の結果は健康な人と比べて健康な人が多く持っている幾つかの腸内細菌が少なかった。

それはクロストリジウム菌の仲間とラクトバチルス菌の仲間だった。

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[急増する免疫の暴走 ケース2]

日本でも免疫の暴走に苦しむ人がいる。

4年前から多発性硬化症を発症した尾崎真由さんの話し。

尾崎さんは突然手足の震えが止まらなくなった。

徐々に歩くこともままならない状態になり、痺れは常にある。

寝ている間も指が震えているという。

多発性硬化症は進行すると失明や言葉が話せないなどの症状に陥る。

原因は脳、尾崎さんの脳をCTスキャンすると白く見える部分があるが それは暴走した免疫細胞が攻撃したため。

この病気も腸で異変が起きていると突き止められた。

免疫学者で国立精神・神経医療研究センターの特任教授 山村隆さんは患者さんの便を解析。

クロストリジウム菌やバクテロイデス菌の仲間など 幾つかの腸内細菌が少なくなっていた事が分かった。

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[免疫暴走のメカニズム]

免疫の暴走によって引き起こされる二つの病。

どちらでも特定の腸内細菌の減少が見られた。

山中メモ

何故免疫が暴走するか今のところは不明。

ただ有力な仮説としては腸内細菌が関わっているとみられている。

アレルギーは突然発症するので、もしかすると腸内細菌の状態も変わっているのかもしれない。

腸内細菌の数は100兆個と言われている。

体の細胞が数十兆個なので10倍も多い。

私たちの体は有益な細菌を選んで腸に住まわせている。

全部で千種類くらいあると言われていて代表格はビフィズス菌。

そんな中で今注目されているのはバクテロイデス菌で脂肪の吸収を抑えて肥満を防ぐ働きがある。


前述の免疫暴走で苦しむ二人に共通して少なくなっていたのはクロストリジウム菌。

およそ100種類あり、中には悪玉菌もある。

免疫をコントロールする重要な役割を果たしている菌もいる。

特定の種類の菌が少ないと多発性硬化症など重傷のアレルギーを引き起こす可能性がある。


何故免疫の暴走が起きるのか。

謎を解くカギを発見したのは大阪大学 免疫学フロンティア研究センター 教授の坂口志文さん。

攻撃するのが仕事と思われてきた免疫細胞に全く違う役割を持つ細胞がいるのを見つけた。

それは制御性T細胞、通称「Tレグ」と呼ばれる免疫細胞。

Tレグは体の中で暴走する免疫細胞を見つけると興奮を鎮める物質を放出して暴走を抑える免疫のブレーキ役。

このTレグは私たちの腸で生み出されていてクロストリジウム菌の働きがカギを握っていた。

クロスリジウム菌は腸の中で食べ物のかけらに取りついて盛んに「落ち着いて」のメッセージ物質を放出する。

このメッセージ物質は腸の壁の中に入っていく。

壁の中では腸を守る免疫細胞がいてメッセージ物質を受け取ると形を変えてTレグに変化する。

こうして生まれたTレグは腸で訓練された免疫細胞と同様に全身に広がっていくと考えられる。

そして辿り着いた先で暴走する免疫細胞を見つけると異常な興奮を抑え暴走を止めている。

今まで番組で紹介してきたメッセージ物質は臓器どうしが発することで全身のネットワークを作り出していた。

腸については中に住まわせている腸内細菌のメッセージ物質も利用している事が分かってきた。

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[日本人に秘められた腸能力]

神奈川県横浜市鶴見区にある総持寺。

修行生活の中で花粉症やアトピーなどのアレルギーが改善しているという。

20人の修行僧の便を採取し腸内細菌の検査を行った。

解析を行ったのは腸内フローラの第一人者。

早稲田大学 理工学術院 教授の服部正平さん。

修行僧の腸にはクロストリジウム菌がしっかり存在していた。

修行の中で注目したのは精進料理で、食事に含まれる食物繊維。


食物繊維が持つ意外な働きが突き止められたのはマウスを使った実験による。

腸内にクロストリジウム菌が多いマウスに食物繊維が多い餌を与え続けた。

この場合はTレグが増えた。

同じくクロストリジウム菌が多いマウスに食物繊維が少ない餌を与え続けたところTレグが増えなかった。

その数は先のグループの半分ほど。

つまりTレグを生み出すためにはクロストリジウム菌と食物繊維の組み合わせが必要という事。


日本人と食物繊維はつながりが深い。

遥か昔から食べていたキノコや木の実・穀物・根菜・海藻類など日本の食材には食物繊維が多い。

そのため長い年月をかけて食物繊維を好む腸内細菌が多く住み着くようになったと考えられる。

先に登場した服部さんの研究で日本人の腸内細菌には優れたパワーがあることが分かった。

調べたのは腸内細菌が免疫力をコントロールする物質を出す能力。

欧米11カ国と日本の健康な人で比べると酪酸や酢酸を出す能力が日本人は欧米人の3.5倍。

日本人は免疫力をコントロールする能力が群を抜いている。

ところが、アトピーや喘息などのアレルギー性疾患の国民に占める割合は増え続けている。

腸内で長い年月をかけて育まれてきた腸内細菌と免疫細胞の関係が現在の食の急速な変化によって乱れていると考えられる。

山中メモ

今までアトピーなら皮膚、喘息なら呼吸器で起こると考えられてきたものに腸が関わっていると示す事が見つかっている。

この数十年で突然、食に関する環境が変わってきた。

おそらく腸内細菌も変化に驚いている。

余談

田中投手の食事はゴボウ・キノコ・イモなど食物繊維を含む食材が多く1食当たりの食物繊維量で17gもある。

修行僧が食べる1日分の食物繊維は20g

ただし、食物繊維は過渡に取りすぎると健康を損なう事があるので注意が必要。

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[尾崎さんの多発性硬化症 その後]

尾崎さんはある臨床試験に参加している。

それはTレグを生むメッセージ物質を人工的に作り、薬として腸まで届けるというもの。

既に動物実験では脳細胞への異常な攻撃が抑えられた。

臨床試験では参加した11人の患者のうち尾崎さんを含む9人の血液中でTレグが増加した。

腸が免疫をコントロールする力を取り戻すことで難病を克服する可能性が示された。

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[終章]

医療関係者は近い将来に難病を根本的に治療する方法が出てくると信じているとコメントしている。

腸内細菌と免疫細胞を従えた人体の免疫本部である腸。

その機能は決して生まれつき備わっていない。

誕生の瞬間私たちの腸には様々な細菌が初めて入ってくる。

たくさんの細菌の中から良いものを選んで育てていく最初の一歩。

それは母乳によって促されている事が分かってきている。

赤ちゃんの腸に流れてきた母乳の成分を吸収してまず急速に増えるのがビフィズス菌。

それを皮切りに私たちの腸は良い細菌を選んで住まわせ育てていく。

こうして免疫本部としての役割を徐々に成熟させる。

ミクロの世界で交わされるたくさんのメッセージが今この瞬間も健康と命を支えている。

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[次回予告]

第五集 「徹底解剖!ひらめく”脳”の秘密」

放送は2月4日(日)夜9時から

キーワードは、

「芥川賞作家 又吉直樹さんの脳を徹底解剖」

「記憶と閃きの秘密に迫る。」

「さらにメッセージ物質を解明することで認知症を克服する画期的方法も見え始めている」

番組まとめ記事↓↓↓

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[独り言]

最近では腸内細菌のバランスを便を移植することで改善する取り組みが行われている。

少々汚い話題にも思えるが真面目に研究されていて今では「うんちカプセル」なるものまで出てきて臨床試験で試されている。

心身ともに健康でいる人の便はそのうちビジネスになるかもしれない。

なんともリサイクル(?)な話しではないだろうか。

ちなみに動物の世界では糞食は普通に行われている。

犬の散歩をしている人の中には他の犬が残した糞を愛犬が食べようとする様子を見たことがあるのではないだろうか。

これはイヌの祖先であるオオカミの時代から続く本能的行動と見られる。

ただし一つの群れで致死性のある病気が蔓延した場合は、腸内環境が同じ≒免疫力や病原菌・ウイルスへの耐性が同じ体になっているため群の絶滅を引き起こす例がある。

人間の場合はそうならないように十分考慮した上で便の移植の実用化を望みたい。

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[余談]

番組MCでもある山中伸弥教授のおひざ元で捏造問題がニュースをにぎわせて まだ日が浅い。

問題の対象は京都大iPS細胞研究所(CiRA(サイラ))に所属する助教(※1)の論文。

山中教授は現職のiPS細胞研究所所長の辞任の意向はなく留任することでケジメを付けるとしている。

問題の論文は、ヒトのiPS細胞から脳の血管内皮細胞をつくり「血液脳関門」と同じ働きが確認できたとする内容。

調査委員会によって計17カ所で捏造・改ざんが認定された。

次回の特集が よりによって『脳』が対象なだけに番組の構成などが心配される。

※1:助教は順位的には教授・准教授に次ぐ役職

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