サイエンスZERO「ノーベル賞2017 重力波が切り開く新天文学」

2018年1月14日

NHK Eテレで放送されている「サイエンスZERO」

テーマは「ノーベル賞2017 重力波が切り開く新天文学」

2017年のノーベル物理学賞は、重力波の観測に世界で初めて成功した米国LIGOの研究に携わった3人に与えられた。

重力波は100以上前にアインシュタインが一般相対性理論で予言したアインシュタイン最後の宿題と言われていた重力を伝える波。

そして最近、新たな重力波源を捕えたことで世界が仰天、天文観測の新世界が開けた。

その重力波観測にはノーベル賞受賞者が絶対の信頼を寄せる日本人研究者の縁の下からの貢献があった。

重力波を観測するに至った物語と新たな天文観測の世界について紹介。

[番組内容(目次)]

[重力波とは]

[重力波アンテナLIGO]

[重力波の観測]

[日本人研究者の活躍]

[中性子星合体の観測]

[バリッシュさんのコメントとまとめ]

[解説]

(番組放送順と多少前後有り)

[重力波とは]

重力波は、凄く大きな質量が動く事によって空間が歪んでそれが伝わる現象

1915年、アインシュタインは世界に衝撃を与えた一般相対性理論を発表し、この中で重力について全く新しい概念を提示した。

それは空間は質量があると歪むというもの。

大きな質量のある天体ほど大きく空間を歪める。

この歪みが重力の源。

空間はバネのような性質を持っていて、重い天体が通るとその勢いで振動する。

天体の動きによって空間の歪が波として伝わっていく現象がアインシュタインの考えた重力波。

しかし、地球で捕らえられる重力波は理論上とてつもなく小さなもの。

そこで三つの大規模な天体現象が観測候補になった。

1)超新星爆発(巨大な星の一生の終わりに起こる)

2)中性子星合体

3)ブラックホール合体

番組内容(目次)へ戻る


[重力波アンテナLIGO(ライゴ)]

今年2017年のノーベル物理学賞はブラックホール合体による重力波の初観測に送られた。

その歴史的観測を成し遂げたのがLIGO。

LIGOは、米・ワシントン州とルイジアナ州に設置された二つの観測器

L字型に4kmずつ伸びたトンネルのような装置で重力波を捕える。

重力波望遠鏡 説明図2

[上の図でAとBの部分が4kmあるアンテナ部分]

内部に設置されたのはレーザー光が通る真空パイプ。

発射されたレーザー光は、まず2方向に分けられる。

パイプの先端にあるのは鏡。

分けられた光は鏡で反射し、合流地点に戻る。

通常は二つのレーザー光は打ち消し合って消える。

ところが、ここに重力波がやってくると変化が起きる。

重力波の通過する方向によって真空パイプの長さに違いが生じる。

その差によって二つのレーザー光にずれが生じて重力波の信号となって検出される。

※重力波アンテナに関する図解入りの説明は別の投稿を参照NHK BS「重力波を探せ」番組まとめ

番組内容(目次)へ戻る


[重力波の観測]

2015年9月14日・午前9時50分45秒

ルイジアナ州のLIGOで0.2秒間の重力波と思われる信号波形が観測された。

これだけなら地面の振動などのノイズの可能性もあった。

その約0.007秒後に3,000km離れたワシントン州のLIGOでも ほぼ同じ形の信号波形が観測された。

得られた信号波形を重ねてみると特徴が一致。

これだけ離れた場所で同じノイズが発生する確率は20万年に1度。

このことから検出した波形は重力波によるものと決定づけられた。

この成果を基にノーベル賞を受賞したのは以下の三人。

レイナー・ワイス氏[観測技術の確立に貢献]

キップ・ソーン氏[理論に尽力]

バリー・バリッシュ氏[巨大プロジェクトのまとめ役]

ただ、その他にもLIGOに従事している20カ国以上から集まった研究者は1,000人。

LIGOは構想に40年以上で、費用は1,000億円を超える巨大プロジェクト。

インタビューに答えたまとめ役のバリッシュ氏は、

「私たちは初めて電磁波(電波や可視光線など)と違った方法で宇宙を見ることが出来るようになった」

「それが重力波観測という新しい方法」とコメントした。

番組内容(目次)へ戻る


[日本人研究者の活躍]

ノーベル賞を裏で支えた日本人研究者は山本博章さん。

カリフォルニア工科大学の上級研究員だが1994年からLIGOに加わり研究を始めた。

それまでは加速器のシミュレーションを研究していたため重力波に関しては素人。

それでもバリッシュ氏は山本さんのシミュレーションは必ずLIGOに生かせると考え、心臓部を任せた。

その心臓部とは鏡。

鏡は1個直径が34cmあり重さも40kgある。

レーザー光を最も効率よく反射する特別な素材でできている。

こうした鏡がLIGOのいたるところに設置されている。

LIGOミラー配置

[上の図で上と右に突き出ている部分が実際には4kmのアンテナ部分・左側がレーザー照射部分で、下に出ているのが検出器がある部分]

重力波は非常に微弱なためLIGOは たくさんの鏡を設置してレーザー光を反射させ、信号の強度を高める工夫をしている。

LIGOの構造は複雑になり巨額の費用が投じられた。

そのため完成してから初めてその性能が分かるのではリスクが大き過ぎる。

そこで白羽の矢が立ったのがシミュレーションのスペシャリストである山本さんだった。

山本さんは複雑なLIGOをコンピューター上で再現し その性能を予測できるようにした。

カギを握るのは何十枚もある鏡の中の11枚で重力波を捕えるのに重要な部分

LIGOミラー配置

[黄色い鏡が最も重要な部分]

この11枚をどこに どのように配置するかのシミュレーションを重ねた。

鏡の配置をZ型にすると機能が向上するのは計算上分かっていた。

ただ、それなりに制御も難しくなるので本当に重力波観測をやるだけの価値があるのか判断が難しい。

山本さんのシミュレーションを使うことで決断することが出来たのだ。


こだわったのは配置だけではない。

1枚ごとの鏡について詳細な情報をシミュレーションに組み込んだ。

それは鏡の表面にある目に見えない細かな凹凸。

ほんの僅かな凹凸によってレーザーの強度が大きく左右される。

LIGOミラーの凹凸

上の図は鏡の凹凸を示すデータ。

赤いほど手前に出ていて青いほど凹んでいる。

この鏡では凹凸が最大で4nm(ナノメーター)で小さな分子数個分ほどの凹凸。

さらに凹凸は鏡ごとに違う。

山本さんは0.5nmの原子数個分の精度までこだわり、鏡の情報をシミュレーションに組み込んだ。

こうして極限まで鏡の影響を検討した上でLIGOに鏡を設置していった。

一人の日本人の知られざる努力に世界初の重力波観測が成し遂げられたのだ。


バリッシュさんによるとLIGOが どうすれば成功するかを知るには理論上の計算だけでは不十分だった。

コンピューターを使いシミュレーションして細かいところまで理解することで可能になると信じていた。

山本さんがLIGOに来たのは1994年の8月。

シミュレーションの開発当初は上手くいかず時間がかかったが、バリッシュさんは山本さんを首にすることなく根気よく待ってくれたと言う。

山本さんは、これからもLIGOの感度向上のためシミュレーションで貢献したいと語っている。

番組内容(目次)へ戻る


[中性子星合体の観測]

LIGOは今でも全世界の中で最高感度を誇っている。

2015年以降、何度もブラックホール合体による重力波を捕えている。

そしてノーベル賞受賞の発表から2週間後の2017年10月16日にLIGOは新たな発表をし世界中を再び驚かせた。

それは2017年8月17日午後12時41分4秒に観測した「中性子星合体」による重力波の初観測。

中性子星は直径20kmほどと小さいが重さは太陽の1.5倍もある超高密度な天体。

でも、この時に捕えた信号が何故中性子星合体だと分かったのだろうか。

それは観測時間の違いにある。


ブラックホールの場合は、凄く重たいため合体するときは重力波を放出しながら短時間に合体してしまう。

その時間は長くて2秒ほど。

重力波信号

一方の中性子星合体は重力波を放出しながら合体するまでの時間が50秒以上と長い。

重力波信号

[一番下の黄色い信号が中性子星合体、それより上はブラックホール合体の信号]

この観測結果の違いは新たな天文学を切り開くと考えられている。

ブラックホール合体では重力波以外は何も抄出されない。

一方で中性子星合体では大量の光りや物体も放出する。

中性子星は どこの銀河で合体したのか、世界中の研究者が特定に動き出した。

そのヒントを提供したのは2か所のLIGOとイタリアにあるVirgo(バーゴ)の合わせて3カ所の重力波アンテナ。

そして今回の重力波は2か所のLIGOでは捕えていたが、Virgo(バーゴ)で捕らえられていなかったのがポイント。

まず、Virgoでは捕えられない宇宙空間を絞り込む。

中性子星合体の位置特定

次にLIGOが絞り込んだ領域を重ねる。

中性子星合体の位置特定

二つの条件を重ね合わせておよその方角に見当をつける。

中性子星合体の位置特定

中性子星合体のデータは、すぐに全世界の天文観測機関に伝えられた。

地上と宇宙の観測施設合わせて100ほどの望遠鏡が向けられた。

そして重力波観測から約11時間後に地球から1億3,000万光年離れた「うみへび座」NGC4993が合体が起きた銀河と特定された。

それから数週間にわたって 様々な波長の光の観測が行われた。

その結果今まで謎が多かった中性子星合体のメカニズムが色々と分かってきた。


GROWTH(国際電磁波観測プロジェクト) は可視光線や赤外線など4種類の電磁波観測を行うプロジェクト。

ここでは波長ごとに地球に届くタイミングの違いに注目した。

GROWTHには さらに世界中から膨大な観測データが送られてきた。

それらデータを生かし、中性子星合体後を説明できるモデルを数週間で組み上げることが出来た。

それを「コクーン(繭)モデル」と呼んでいる。

この「コクーンモデル」は全ての波長の光について得られた観測結果を一度に説明できるもの。

プロジェクトリーダー マンシー・カスリワルさんによると 中性子星合体に見られる順番は、

1)互いに重力波を出しながら回る。

その時 地球1万個分の物質が引きはがされる。

2)引きはがされた物質が繭(まゆ)のように周りを覆う。

3)合体の瞬間、ガンマ線が放出される。

4)その後、爆発の衝撃で放出された物質が激しくぶつかり合うことで紫外線から順に波長の長い光りが出ていく。

(紫外線→可視光線→赤外線)

5)さらに爆発の衝撃で広がっていた物質は宇宙空間の塵などにぶつかってX線や電波を発する。


カスリワルさんのコメント

私たちは重力波観測によってその現象が宇宙のどの宙域で起こったのか知ることが出来た。

宇宙にはまだ調べることが沢山ある。

そのためには今回の様な観測がもっと必要。

番組内容(目次)へ戻る


[バリッシュさんのコメントとまとめ]

重力波観測は分野を超えた新たな天文学の始まり。

これからの10年で私たちはLIGOの感度をさらによくする。

それによってさらに新しい宇宙の謎をより高い精度で知ることが出来る。

物理学や天文学はこの宇宙を記述する素晴らしいもの。

私たちはこの宇宙の事をもっと知りたいと願っている。


まとめ

金やプラチナと言った金属は超新星爆発で出来ることが分かっているが量が足りない。

それが中性子星合体で出来ると言うことが分かってくるかもしれない。

LIGOとVirgoに加えて日本のKAGRA(かぐら)が稼働するとさらに観測が広がることが期待されている。

番組内容(目次)へ戻る

 こちらの記事もいかがでしょう>>>NHK「重力は幻想なのか?」番組まとめ

 NHK ドキュメンタリー関連 BLOG内リンク>NHK ドキュメンタリー関連

**「エントロピー増大の投稿」を御覧 頂きありがとうございます。**