「ついに解明!“ブラックホール成長の謎”」番組まとめ

2018年

NHK Eテレの科学ドキュメンタリー番組「サイエンスZERO」

テーマ「ついに解明!“ブラックホール成長の謎”」について番組内容をまとめてみた。

[番組内容]

[序章]

[ブラックホール理論]

[中質量ブラックホールの謎]

[重力波観測]

[ブラックホールは見つけにくい]

合体・吸収のメカニズム

ガス雲の電波観測

もう一つの成長メカニズム

[終章]

[独り言]

[解説]

(番組放送順と多少前後有り)

[序章]

多くの謎に包まれている天体ブラックホール。

強力な重力で周りの物や光さえ飲み込んでしまう。

直接観測できないため今も多くの謎に包まれている。

その一つが「ブラックホールの成長の謎」

銀河の中心には太陽質量の数百万倍の超巨大ブラックホールが存在するが、誕生した経緯が分からない。

ブラックホールは誕生直後は太陽質量の数倍の物しかできない事が分かっている。

何故 何百万倍ものブラックホールが生まれるかは謎。

そんな中 重力波の観測によって合体して成長するプロセスが明らかになった。

[ブラックホール理論]

100年ほど前にアインシュタインが発表した一般相対性理論。

この理論では質量を持つ物の重力によって周りの空間が歪む。

カール・シバルツシルト(1873-1916)は相対性理論を元に計算し、ある天体を一点に限りなく収縮させるとブラックホールになると予言した。

ブラックホールの誕生

ブラックホールは太陽の30倍以上の恒星の一生の終わりに出来る。

恒星の中では核融合で水素がヘリウムになり、その過程で熱が発生し星を膨張させようとする。

その膨張に反して星の重力が収縮しようとしてバランスが保たれる。

星が最期を迎える時は星の中心で鉄ができ、星は中心に向かって重力落下=崩壊する。

その反動で超新星爆発を起こして星は終わりを迎えるが、中心にブラックホールができる。

余談

単純に図解すると以下の通り

太陽より重たい星では鉄の手前に核融合でシリコンが作られる

核融合の燃料が尽きるとシリコンは鉄へと核融合するが、このとき重力崩壊し一気に星の中心へと落ち込む。

中心核まで達した重力崩壊による衝撃波は跳ね返り、星の表面へと向かう。

衝撃波が表面に達すると星は超新星爆発し、中心核は重力崩壊の時の衝撃波でさらに収縮しブラックホールが誕生する。

[中質量ブラックホール]

ブラックホールは誕生直後は太陽質量の数倍しかない。

一方最近までの観測で銀河中心には太陽質量の数百万倍の重さの巨大ブラックホールがある。

銀河系では「いて座A☆(スター)」という太陽質量の400万倍のブラックホールがある事が分かっている。

他の銀河では太陽質量の数百億倍もの超巨大ブラックホールがあるとみられている。

ただ太陽質量の数倍と数百万倍の間の重さ=数十倍から数十万倍までの中質量ブラックホールが今まで見つかっていなかった。

[重力波観測]

中質量ブラックホールの存在に光明を与えたのは2016年2月に発表があった米国 重力波アンテナLIGO(ライゴ)による重力波の観測。

LIGOでは2015年9月と12月の2回 ブラックホール合体による重力波を観測していた。

9月の観測

太陽質量36倍と29倍のブラックホール合体後62倍のブラックホールが誕生。

差分の3倍分の質量に相当する重力波が観測された。

12月の観測

太陽質量14倍と8倍のブラックホール合体後21倍のブラックホールが誕生。

差分の1個分の質量に相当する重力波が観測された。

余談

今まではブラックホールが合体して成長する仮説があったが観測されていなかった。

重力波観測のチャンスは三つ。

1)超新星爆発

2)中性子星どうしの合体

3)ブラックホールどうしの合体

これらが宇宙で発生する確率から重力波が観測されるとしたら中性子どうしの合体と思われていた。

今回の結果からブラックホールどうしの合体の頻度は予測していたより多いのかもしれない。

[ブラックホールは見つけにくい]

合体・吸収のメカニズム

慶應義塾大学 理工学部 教授 岡明治さんはブラックホールの成長を研究している。

ブラックホールは直接電波や光で観測する事は出来ない。

ブラックホールの近くに恒星が存在しガスを吸い込んでいれば その吸い込まれるガスが数千万度に熱せられることからX線を放出する。

このX線を観測する事で間接的に観測するしかない。

ただ多くのブラックホールの周りには吸い込む物が無いと考えられている。

ガス雲の電波観測

ブラックホールが影響を及ぼす(吸い込む)ガスの運動は かなり遠くまでと見られる。

前出の銀河中心の巨大ブラックホール「いて座A☆」の周辺を電波観測すると200光年離れたガス雲が何らかの重力源によって振り回されている。

その振りまわされている中心に太陽質量の10万倍の質量のブラックホールがあると計算された。

このような電波観測で銀河中心付近に太陽質量の1万倍のブラックホール候補が何個か見つかった。

この観測結果を元に推測するとブラックホールの分布は銀河系全体に広がっており、特に銀河中心には巨大質量のブラックホールがあるとみられている。

↓[銀河系推定図]↓

黄色矢印が太陽系、赤い点がブラックホール

ブラックホールの推定数は銀河系内で1億~10億個と見られる。

もう一つの成長メカニズム

東京大学 天文学教育研究センターの泉拓磨研究員は銀河中心のブラックホールの成長メカニズムについて研究している。

ガスを吸い込んでいるブラックホールも常にガスを吸い込んでいるわけではない。

周囲に吸い込む物が無くなってしまたり、再び吸い込み始めたりを繰り返していると考えられている。

また吸い込まれるガスには遠心力がはたらくため直ぐにブラックホールには落ち込まないとみられている。

泉さんはブラックホールにガスを向かわせる何かがあると考え、その候補に超新星爆発を考えた。

銀河中心にはガスが集まって星の誕生が速く、巨大な星が生まれれば数百万年ほどで寿命を迎え超新星爆発も多いと考えられる。

超新星爆発のエネルギーで吹き飛ばされたガスがブラックホールへ向かう事で銀河中心のブラックホールが成長しているという理論を考えた。

この理論による計算とチリのアタカマ砂漠にあるアルマ天文台での観測結果は ほぼ一致。

計算では太陽質量の数千万倍から1億倍くらいまで成長する事になる。

余談

ブラックホールがガスを吸い込んで成長するペースは1年間に太陽質量の0.1倍。

一見少ない数字に見えるが1億年で太陽質量の1千万倍になる。

銀河系の始まりは今から130億年以上前と見られているので現在の観測による400万倍は計算に照らし合わせると むしろ小さいと言える。

[終章]

ブラックホールの成長プロセスについて「合体」と「ガスの吸い込み」どちらが主体なのか。

他の銀河の中心を調べると暗いブラックホールの割合が9割、ガスを吸収して輝いているブラックホール≒吸収銀河核が全体の1割と見られている。

今後 銀河中心核のブラックホールを研究する事で銀河の進化・形成の手がかりが得られると考えられている。

[独り言]

米国LIGO×2か所での重力波観測で「超新星爆発」と「中性子星合体」は未だ見つかっていない。

LIGO2基だけではの重力波アンテナでは能力が不足しているのだろう。

それを裏付けるかのように つい先日LIGOと欧州のVIRGO(バーゴ)による共同観測で中性子星合体を観測したと発表された。

今後日本のKAGRA(かぐら)を含めた世界各国の重力波アンテナが稼働し、宇宙空間に衛星として打ち上げる予定の重力波アンテナが実現すれば 超新星爆発も捕えられるかもしれない。

それによって宇宙はドラマチックなほど劇的な変化をする空間なのだと知ることができるのだろう。

30年ほど前の宇宙天文学の第一人者カール・セーガンは「宇宙は落ち着いた安定した世界=静的宇宙」とした。

今では動的宇宙論が主流。

それを考えると人類の知識は未だにこの世の1%にも満たないだろう。

さらに知識を深め新たなフロンティアを目指すためにも科学の発展から目が離せない。

[個人的な意見です]

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