NHK「重力は幻想なのか?」番組まとめ

2018年

NHK Eテレで放送された「モーガン・フリーマン 時空を超えて」

テーマ「重力は幻想なのか?」

2015年に重力波が観測された事で重力を伝える波の存在が明らかになった。

にも関わらず一部の科学者は重力は幻のような存在だと信じている。

幻のような存在に理由付けするための概念が「重力」だと言うのだ。

番組では今までの物理学で追いかけている重力とは違った物の見方をする事で重力の正体に迫ろうとしている。

番組で紹介された科学者の主張はまだ実証されたものではなく、今までと違った目線で重力を捕える者たちの主張を紹介する。

[番組内容]

[重力波の観測]

[重力子]

[反物質と重力]

[重力子は動かない]

[エントロピーと重力]

[ブラックホールの事象の地平面]

[ブラックホールの影を見る]

[モーガン・フリーマンのまとめ(要約)]

[独り言]

[解説]

(番組放送順と多少前後有り)

[重力波の観測]

マサチューセッツ工科大学 天体物理学者 ナルギス・マヴァルヴァラの話し。

マヴァルヴァラは他の科学者・技術者と共に重力波を観測する方法を開発し、その成果は米国の重力波アンテ「LIGO(ライゴ)」に生かされた。

その「LIGO」で2015年世界で初めて重力波の検出に成功した。

これでアインシュタイン最後の宿題(≒相対性理論が予言する事象)が解決したことになる。

一方で、この世界を説明するためのもう一つの理論 量子論では重力に関連する素粒子=重力子があると考えるが未だ見つかっていない。

今後 重力波観測が進むことで重力子が発見される日が来るのだろうか。

[余談]

米国LIGOに加えて日本のKAGRA(カグラ)他世界各国で重力波アンテナが稼働を始める。

その他にもスペース重力波アンテナDECIGOの計画もある。

関連記事

ウィキペディア 重力波検出器

KAGRA 大型低温重力波望遠鏡


[重力子]

カリフォルニア大学 量子物理学者 ツヴィ・バーンの話し。

大統一理論で扱う「四つの力」のうち「強い力」「弱い力」「電磁気力」に関しては介在する素粒子が見つかっている。

だが、重力子だけは未発見。

バーンは重力子の正体はユニタリティ・メソッド=2つのグルーオンがペアになったモノではないかと考えている。

グルーオンとは量子論で扱う四つの力の中で「強い力(相互作用)」に該当し陽子や中性子の中で3つのクォークを結びつけるモノ。

もしこれが立証されれば4つの力の中で素粒子を結びつける「強い力(相互作用)」と巨大な星を結びつける「重力」が同じだという事になる。

関連記事

コトバンク グルーオン

コトバンク 四つの力


[反物質と重力]

CERN(セルン) 物理学者 ドラガン・ハジュコビッチの話し。

重力と反対の働きをする現象に宇宙の加速膨張がある。

宇宙空間を押し広げようとする存在はダークエネルギーと名付けられた。

重力に逆らう動きをするダークエネルギーを知ることは重力を知る手掛かりになるかもしれない。

そのダークエネルギーの候補の一つが反物質だと言う。

一般には この宇宙が生れた時に物質と反物質はほぼ半々だったが対消滅することで反物質は無くなり、僅かな条件の差で物質だけが残ったとされている。

その反物質は通常物質と出会うと大爆発し真空の空間に消える。

だが反物質は物質に反発する事があると言う。

物質は銀河を構成するために集まったが反物質は銀河と銀河の間にまとまって隠れて存在していると主張する。

その反物質の斥力(反発する力)によって銀河(空間)は膨張しているという理屈。

宇宙空間を膨張させているダークエネルギーと呼んでいるものは実は反物質だと言う。

余談

上記の(番組で)ドラガン・ハジュコビッチの話しとして語られている内容は2012年にイタリア トリノ天文台の宇宙物理学者マッシモ・ビラータによって発表された理論だと思われる。

むしろドラガン・ハジュコビッチはビラータがいう反物質による斥力に対して疑問を投げかけた人物。

(ビラータが言う通り銀河間に反物質が存在するなら電磁気学的に観測できる筈なのに何故観測できないのかと疑問を投げかけた)

個人的に正しく理解できているかどうか怪しいがハジュコビッチが唱えた理論はダークマターに関するもの。

その理論は2011年に発表され(量子)真空における重力に関わる仮想粒子と反仮想粒子が(重力)双極子を起こしているとしたもの。

その双極子は現在知られている重力と相互作用して強め合い そのことをダークマターと呼んでいるのではないかと予言した人だと理解している。

※ちなみに「重力は幻想なのか?」は2014年に米国で製作された番組

関連記事

コトバンク 双極子


[重力子は動かない]

プリンストン大学 理論物理学者 ハーマン・ベリンデの話し。

相対論的宇宙では滑らかな波がある何もない空間、量子論的宇宙はデコボコした粒子が詰まった空間であると言える。

重力子の速さは光りの速さと同じ。

それならば宇宙空間が滑らかでもデコボコでも関係ない。

光りの速さで進む物体から見れば世界は短く狭まり、三次元ではなく二次元の面の様に見えるからだ。

私たちの視点からは素粒子の動きは線を描く様に動いて見えるが、素粒子には違った見え方(=実際には動いていない)をしていると言う。

ロジャー・ペンローズが提唱した「ツイスター空間理論」「ホログラフィック原理」では重力子が通る空間は点や線が全く違った空間になるという。

この理論を合体させベリンデは「ツイスター・ホログラフィー理論」を提唱、重力子は静止していて空間の方が動いているという。

重力子から見ると現実は壁に写った映像の様な物が次々と通り過ぎていくのだという。

関連記事

Weblio 辞書 ツイスター理論

ウィキペディア ホログラフィック原理


[エントロピーと重力]

プリンストン大学 理論物理学者 エリック・ベリンデ(上で登場しているハーマン・ベリンデと双子の兄弟)の話し。

エリックによるとエントロピーと重力にはつながりがあると言う。

持ち上げたリンゴが落ちる例をあげてリンゴ(秩序有るもの)は落ちると落下エネルギーは熱に変わりリンゴは砕けて(無秩序になり)エントロピーは増大する。

持ち上げたリンゴはエントロピーを増大させようとして落ちる=>この現象を重力だという理屈。

これは物体が巨大な物体に向けて落ちる時に重力を感じる事。

すなわち宇宙が物体の内部でエントロピーを増大させようとはたらいている事が重力の正体だと言う。

余談

番組ではこの後に気球の例え話しに入る。

「気球は熱っした空気を気球の中に蓄える事でエントロピーを増大させようとして空気は気球を浮かべる」旨(むね)の説明しているが、先の説明ではエントロピーを増大させるようにするなら気球は地球に向かって落ちるはずである。

番組ではエントロピー増大を浮力に結び付けて説明しようとしているが原理の説明はともかく話の流れ上ややこしくしている。

気球を使って説明するとしたら、

「気球の中の空気は一定の火力によって温められ=エントロピーを減少させるはたらきを行っているため、重力(=エントロピー増大)に逆らって空に浮かび続ける」

または、

「気球の中の空気を温めるのを止めると気球の中の空気は冷め(=エントロピーは増大し)気球は地球に向かって落ちていく」

とした方がつじつまが合う。

いずれにせよ個人的には気球の件(くだり)は誤解を招きやすいので不要に思える。


[ブラックホールの事象の地平面]

物理学者 ショーン・キャロルの話し。

ブラックホールの「事象の地平面(以下 地平面に略)」の中は観測不能。

地平面の中では重力が新しい形をとると考えられている。※1

地平面近くで「量子もつれ」を計算すると今までと矛盾が生じる。

「量子もつれ」で素粒子は1対1で対応するがブラックホールにおけるもつれを計算した結果は複数のパートナーがもつれを起こす事になる。

この矛盾を提唱者の名前を取って「アルムヘイリ・マロルフ・ポルチンスキー・サリー・パラドックス」(※2)と呼ぶ。

ただこれらは仮説に仮説を重ね合わせたもので実際にブラックホールで起きている事象を観測できない事には正しいのかどうか分からない。

※1:地平面より中・ブラックホールの底やビッグバン以前などの特異点を説明できる理論は現在のところない。

※2:”AMPS” ファイアウォールまたはブラックホールファイヤーウォールと呼ばれている。

[余談]

「アルムヘイリ・マロルフ・ポルチンスキー・サリー・パラドックス」はスティーブン・ホーキングが提唱したホーキング輻射=ブラックホール蒸発理論にも関係する。

要するに「ブラックホールの蒸発理論」と「量子もつれ」が正しい事を前提にしている。

「ブラックホールの蒸発理論」

ブラックホール蒸発は、地平面付近で粒子と反粒子が対発生し粒子がブラックホールの外に飛び出て反粒子がブラックホールに落ちて行ったときに起きる。

反粒子はマイナスのエネルギー(=重さ)を持っているのでブラックホールに到達すると持っていたエネルギー分だけブラックホールは軽くなる。

これが続くことで(天文学的時間が経過した後に)ブラックホールは無くなる。

「量子もつれ」

一方「量子もつれ」では対生成した粒子と反粒子がもつれあい 同じ動き(もしくは正反対の動き)を取る。

アルムヘイリ・マロルフ・ポルチンスキー・サリーが計算したところによると「対生成して飛び出した粒子は それらのほとんど全てが「量子もつれ」を起こす事になる」という。

「アルムヘイリ・マロルフ・ポルチンスキー・サリー・パラドックス」

ただし「ブラックホールの蒸発理論」と「量子もつれ」が誤っていた場合は違った結論になる。

地平面より中の世界は現在の物理学では説明できる理論が無いのだからこのパラドックスも『仮説を積み重ねた理論であって結論ではない』

関連記事

コトバンク 事象の地平面

ウィキペディア “AMPS” ファイアウォール

コトバンク 対生成

コトバンク 量子もつれ


[ブラックホールの影を見る]

天文学者 シェップ・ドールマンの話し。

光りを出さないブラックホールをどう捕えるかに挑もうとしている。

ブラックホールの周辺を通る光りの曲がり具合を見るには地球サイズの望遠鏡が必要になる。

試みは世界各国にある多数の望遠鏡を連携させて同時にブラックホールの方向へ向けバーチャルな巨大望遠鏡=地球規模の望遠鏡にする。

実際に稼働する事でブラックホールで起きる事象(現象)を観測できるか期待されている。


[モーガン・フリーマンのまとめ(要約)]

「重力はリアルに感じられる」

「重力は見かけと違うかもしれない」

「もし重力が幻想だとすれば私たちは宇宙に関する知識を根本から考え直さざるをえない」

「それを恐れぬ勇気を持つ事で真実を味わうことができる」


[独り言]

相対性理論を基に重力を考えようとすると空間と時間が絡んでくる。

また重力は宇宙膨張にも密接に絡んでいて それを研究しようとすると銀河を引きあうダークマターや宇宙を膨張させるダークエネルギーについても考えなければならない。

そして今の量子論では重力を説明する理論が無い。

もし重力子の発見が出来ないのであれば、相対性理論も量子論も大筋では間違っていないが それらが説明できない重力子などを補うための理論が必要になってきている。

世紀の大発見をする科学者は何時現れるのだろうか。


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