「謎の金属天体 プシケ」番組まとめ

2017年

[2017年11月20日一部文章追加]

NHK BSプレミアムで放送されている「コズミック フロント☆NEXT」

テーマ「謎の金属天体 プシケ」について番組内容をまとめてみる。

金属天体プシケは多く小惑星と違い金属が剥き出しのまま存在している。

他の星が表面に岩石をもっていたり、水星が氷の塊だったりするのとは まったく違った姿をしている。

何故 そんな金属天体が存在するのか、できた経緯は?

最初から金属天体として存在したのか数々の疑問に迫るとともに今後の探査計画について知る。

[番組内容]

(番組放送順と多少前後有り)
[序章]

[プシケの発見・観測]

プシケの発見

近年の観測

[プシケ探査計画]

[探査計画の準備]

地形を読み解く

衛星開発

[鉄の起源]

[鉄の塊はどうやってできたのか]

太古の隕石

天体形成の定説

[プシケ誕生のシナリオを予測]

岩石に残る磁気

地質学上の仮設

周りの岩石はどこへ

[終章]

[独り言]

[解説]

[序章]

2017年1月 NASAが探査目的地に小惑星帯にある金属天体プシケに決定した。

プシケでは探査によって高さ10kmの断崖や不思議な形をしたクレーターが見られると期待されている。

金属≒鉄と言えば地球では今まで隕石として もたらされてきたが、どこから来るのかは謎。

そんな鉄の巨大な塊が剥き出して存在する謎は、太陽系の成り立ちを紐解く手掛かりになるはず。

地球上の自然界で鉄の塊を見る機会は少ない。

有名な物はナミビア平原で地表より少し低い位置にある「ホバ隕石」

8万年前に落下したと考えられ成分はニッケル16%に鉄が84%

鉄ニッケル合金で重さが60トンあり動かす事が出来ない。

この隕石もいつどのように作られ地球に来たかは未だ謎のままである。

[プシケの発見・観測]

プシケの発見

プシケは19世半ばイタリアのカポディモンテ天文台で発見された。

19世紀当時ののイタリアは小惑星帯での天体発見で世界をリードしていた。

発見者はアンニーバレ・デ・ガスパリス(1819-1892)

デ・ガスパリスは1852年3月17日にしし座方向で見慣れない点を発見。

この点=天体がプシケだった。

[余談]

当時の天体望遠鏡は大きさは今なら数千円で売られているくらいの短く小さなものだった。

当時としては高価なレンズや金属の鏡筒を使っていたとはいえ そのような小さな望遠鏡で探し出した当時の天文学者の情熱には頭が下がる。

近年の観測

アレシボ天文台のパトリック・テイラー博士の話し。

アレシボ天文台はプエルト・リコにあり望遠鏡は直径305mのパラボラ。

ここでは世界中の彗星や土星の衛星、小惑星の観測がメインで行われている。

波長12.6cmの電波を「プシケ」に当てて反射してくる電波を観測したところ反射率は37%

これは通常の岩石天体の3倍の数字。

これだけ高い反射率と言う事は「プシケ」の表面がほとんど金属である証拠。

電波を当て続けて観測したところ「プシケ」はほぼ球状で直径が200km以上。

(これは関東地方より大きい)

鉄ニッケル合金の資源として金額に換算すると1000京ドル。

[余談]

アレシボ天文台はSETI(セティまたはセチ)=地球外知的生命体探査でも有名な天文台。

参考サイト

ウィキペディア 地球外知的生命体探査

[プシケ探査計画]

ブルーズ・ビルズ博士>リンディー・エルキンス・タントン教授の話し。

プシケの探査計画決定までの道のりはカリフォルニア州にあるJPL(ジェット推進研究所)のビルズ博士が興味深い論文を見たことがキッカケだった。

ビルズ博士は40年来 月・金星・火星と言った小天体の研究を続けてきて、主な対象は岩石惑星。

2011年にアリゾナ州立大学のタントン教授の金属天体の成り立ちに関する仮設論文を見て声をかけた。

これがキッカケで2015年のNASAディスカバリー計画(小予算宇宙探査)へ募集した。

提案概要は「プシケにカメラや磁力計を積んだ衛星を接近させる」というもの。

合計27の提案が集まり2016年に絞り込まれたのち2017年1月に「プシケ計画」が決定した。

今後の計画概要

2022年8月:ロケット打ち上げ

2023年5月:火星に接近してスイングバイ

2026年1月:プシケに到達予定(20カ月間地質や時期などを調べる)

[探査計画の準備]

探査チームが編成されチームではプシケの地形を読み解く準備を進めている。

地形を読み解く

コロラド州サウスウエスト研究所のシモーヌ・マルキ博士の話し。

金属を使った衝突実験を繰り返し表面の地形について推定している。

衝突させる金属の成分はプシケの観測データに合わせ、これに岩石などをぶつけるとミルククラウン(※1)の形が残ったままクレーターが固まるため周辺は羽根が生えた様にささくれ刺々している。

プシケのクレーターも羽根付きの物が発見される可能性がある。

※1:水面に水滴を落とした時に出来る王冠形状。

写真に撮りやすくするため粘性のあるミルクに水滴を落とし高速度撮影した映像をスロー再生して初めて この形状が分かった。

そのときに使った液体からミルククラウンの名前がある。

参考サイト

YouTube動画 ミルククラウン

衛星開発

2017年1月に「プシケ計画」が決まってから探査衛星の設計も進められている。

プシケを探査するための衛星は地球を周回する物とは異なった構造になる。

本体は小さく太陽電池パネルは巨大なものになると言う。

また本体にはカメラを2台、磁力計の他にガンマー線中性子分光計を搭載する予定。

[余談]

探査衛星に搭載する「ガンマー線中性子分光計」とは おそらく一般に「ガンマー線分光計」と呼ばれるものの探査特化型だと思われる。

JAXAの打ち上げた月周回衛星「かぐや」に搭載されたものと基本的には構成が同じものだろう。

この器械は銀河宇宙線がプシケにぶつかることで発生した中性子が次にプシケの物質にぶつかり その時に放射されるガンマー線(※2)を測定するものと思われる。

これによりプシケを構成する元素組成を調べようという試み。

※2:ガンマー線=放射線の一種で高エネルギーの電磁波、ガンマー線はエックス線より波長が短い。

参考サイト

JAXA ガンマー線分光計

コトバンク ガンマー線分光計

[鉄の起源]

ラス・カンパナス天文台で観測を続けているマサチューセッツ工科大学のラナ・エジディン博士の話し。

現在 恒星を調べてみるとガス状の鉄が存在する。

星を調べると大きく二種類あり「金属を大量に持つ星」と「金属をほとんど持たない星」に分けられる。

宇宙の始まりビッグバン直後の宇宙で存在していたのは水素・ヘリウムと僅かなリチウムだけだった。

鉄は太陽より大きな恒星の核融合の最終形として作られる。

星が迎える最後の超新星爆発で星の中にあった鉄を始めとした各種元素が宇宙に散る。

その後散った元素は集まって星雲となり、そこから再び星が生まれる。

そのようなプロセスの中でプシケの様な金属天体も生まれたのだろうか。

[鉄の塊はどうやってできたのか]

太古の隕石

スミソニアン博物館 ティム・マッコイ博士の話し。

地球に落ちてくる隕石の95%は岩石質。

その中の特別な隕石を調べると宇宙にまき散らされた鉄がどんなものだったか分かると言う。

46億年前に宇宙に漂っていた鉄が、押しつぶされた岩石質の中に小さな粒となって入り込んでいる隕石を見ることができる。

天体形成の定説

アリゾナ州立大学 リンディー・エルギノス・タントン教授の話し。

アリゾナ州にある巨大隕石落下跡のメテオクレータは直径1.5kmで深さ170m

そのような場所の様に地面を深く掘っても鉄の塊は出てこない。

天体形成に関する従来の定説では、

「惑星が大きく成長すると熱がこもってマグマになり岩石が溶ける」

「マグマの中で重い鉄は中心へ沈んでいき集まってコアを作る」

「コアでは溶けた鉄が動くことで地磁気を作ってきた」

水星・金星・火星(※3)も地球と同様にコアがあると考えられている。

地球も300km地下にはプシケの様な金属の塊がある。

※3:水星・金星・火星のように表面が岩石質の惑星は地球型惑星と呼ばれる。

[プシケ誕生のシナリオを予測]

地球型惑星の様に岩石に包まれているはずの鉄の塊が何故むき出しで宇宙空間に浮いているのかは謎。

岩石に残る磁気

ボストンで研究を進めるマサチューセッツ工科大学 ベン・ワイス教授の話し。

岩石に残った磁気の痕跡を調べている。

調査の対象はアエンデ隕石と呼ばれ、太陽系初期の天体のかけらと見られているもの。

このアエンデ隕石は一度も溶けたことが無いが地磁気の影響を無くした超高感度磁力計で測ると長期間磁気を浴びていたと分かった。

この今までの定説では考えられない結果についてワイス教授はタントン教授に相談し新たな仮説を立てた。

それは「内部は溶けて鉄のコアを持つが表面は冷えている天体が存在する」というもの。

そのためには今までの定説では分かっていない熱源が必要になる。

地質学上の仮設

トリニティ・カレッジ・ダブリンのイアン・サンダース博士の話し。

地球の岩石を調べる地質学者で隕石にも興味を持っている。

サンダース博士は生まれたての太陽系では高温の小天体がたくさん生まれていたと考えている。

それを裏付けるため検証を続けてきた。

サンダース博士が目を付けたのは普通の岩石にたくさん含まれているAL-26(アルミニウム26)

AL-26は超新星爆発で作られると言われ、放射性物質で岩石の中で熱源になり300万年で無くなる。

[余談]

アルミニウムは通常元素番号13で質量数は27で安定する。

ところがAL-26は質量数が26で不安定。

[β-崩壊と電子捕獲(※4)]によって安定したMg26(マグネシウム)へと変わる。

ほとんどのAL-26がMg26へ変わるまで300万年かかると言われている。

※4:β-崩壊=原子から陽電子(+電荷の電子で反物質)とニュートリノを放出する事でアルミニウムの中の陽子1個が中性子に変わる=>原子番号が1つ下がりMg26に変わる。

放出された陽電子は近くに有る電子1個と対消滅しエネルギーに変わる。

周りの岩石はどこへ

アリゾナ州立大学 エリック・アスパーグの話し。

アスパーグは小さい天体の衝突シミュレーションを行っている。

サイズの違う金属コアを持つ二つの小さな天体を衝突させると、小さい方の天体のコアは大きい天体に取り込まれる。

この二つの天体の衝突角度によっては小さい方の天体のコアの一部が放り出され、岩石は砕け散る。

この放り出された一部のコアがプシケなのではないかと言う。

[終章]

これまで惑星は小さな塵の合体・衝突でゆっくりと成長したと考えられてきた。

小惑星は育ちそこなった惑星の材料。

しかし太陽系初期の鉄のコアを持った小天体が合体・衝突しプシケが出来たのだとしたら。

探査衛星で その痕跡を探ることで新たな惑星誕生のシナリオを知ることができるかもしれない。

[独り言]

プシケの成り立ちが分かれば小惑星帯以外にも地球付近で資源になる天体を見つける手掛かりになるかもしれない。

事実 金属製の隕石は地球上に落ちてきている。

どこかに金属天体や金属の塊が存在していて地球の引力圏に入るからこそ隕石として落ちてくる。

それは将来人類が今より遠い宇宙へ飛び立つための資源として、月や地球のラグランジュポイントに作るであろう製造工場での資源として使う日が来るかもしれない。

プシケを地球まで運んで来て1000京ドルの資源として使うことがあるとしても遥か未来の話だろう。

だが月やラグランジュポイントで工場を稼働させるのは それよりも近い未来になるはず。

その時の足掛かりにするためにも「プシケ計画」は重要な知識をもたらしてくれるのではなかろうか。

[個人的な意見です]

参考リンク

ウィキペディア ラグランジュポイント

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